第46回日本集中治療医学会学術集会

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ジョイントシンポジウム

[JSY1] ジョイントシンポジウム1
(日本集中治療医学会・日本呼吸器学会) ARDS:病態からみた患者管理の組み立て方

Fri. Mar 1, 2019 9:00 AM - 10:30 AM 第1会場 (国立京都国際会館1F メインホール)

座長:讃井 將満(自治医科大学附属さいたま医療センター麻酔科・集中治療部), 田坂 定智(弘前大学呼吸器内科)

[JSY1-2] びまん性肺胞傷害(DAD)と非DADを如何に鑑別するか?:HRCTによる病態評価・予後予測

一門 和哉 (済生会熊本病院呼吸器センター呼吸器内科)

肺癌、COPDなど種々の呼吸器疾患において、個別化医療の重要性が唱えられている。ARDSの臨床病型は、全身状態の重症度から2つのフェノタイプ(phenotype 1, 2)に分類され、病態・治療反応性や予後が異なることがわかってきた。一方、ARDSの病理像はびまん性肺胞傷害(DAD)と定義されていたが、近年その割合は約50%に過ぎないことも報告されている。また、外科的生検350症例のメタ解析の結果、DAD所見は最も予後不良な因子であることも再認識されており、DADと非DADの分類は、病理組織所見から見たもう1つのフェノタイプであると言える。ARDS領域では、HRCT所見による海外での評価は極めて稀であるが、日本呼吸器学会を含む4学会合同の特発性間質性肺炎国際ガイドラインでは、組織学評価が困難な本病態に対して、病理形態所見を反映したHRCT所見の重要性が認知されており、原因不明のDADである急性間質性肺炎(AIP)のHRCT所見も明記されている。我々は、2004/10月よりARDS症例のHRCTによる前向き評価(IRB承認No. 238)を開始し、これまで200症例を超える症例を集積してきた。HRCTの解析として、(1)画像パターンによる解析と、(2)気管支拡張像を伴う濃度上昇域に反映される線維増殖性病変の広がり(HRCTスコア)の2つ観点から評価を行った。(1) HRCT所見をパターン別に3型( definite DAD: 気管支拡張像を伴う多小葉性の濃度上昇域, possible DAD: 気管支拡張像を伴わない多小葉性の濃度上昇域, Inconsistent with DAD:両側性区域性浸潤影)に分類し、アウトカム指標をブラインドにし、2名の胸部放射線科医の評価を行った結果、definite DADパターンは56%の頻度に認められ、生検や剖検におけるDADの頻度と同等であった。さらにHRCT上のdefinite DADパターンが独立した予後因子であることを確認した。(2) HRCT所見に基づいて線維増殖性病変の広がり(気管支拡張像を伴う濃度上昇域の広がり)を半定量評価したHRCTスコアが、ARDSの独立した予後因子であり、人工呼吸器関連指標(人工呼吸器離脱日数VFD, 人工呼吸器関連肺炎、圧外傷)の予測因子となることを報告した。また、原因病態別(直接肺損傷・間接肺損傷、敗血症性)解析においても、急性期DICスコアとともにHRCTスコアの予後予測の有用性を確認している。HRCTによる評価は、病理学的所見に基づくDAD、非DADの鑑別に有用であるだけでなく、病態評価・予後予測にも役立つ指標であり、ARDS領域の個別化医療への応用が期待される。