第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

リハビリテーション

[O125] 一般演題・口演125
リハビリテーション11

2019年3月2日(土) 15:50 〜 16:40 第21会場 (グランドプリンスホテル京都B1F ローズルーム)

座長:丸谷 幸子(名古屋市立大学病院 ICU)

[O125-4] 心臓手術後における神経筋電気刺激療法の有用性に関する検討

松尾 知洋1, 井上 航一2, 齋藤 和也1, 大塚 翔太1, 北條 悠1, 石原 広大1, 平岡 有努2, 近沢 元太2, 吉鷹 秀範2, 坂口 太一2 (1.心臓病センター榊原病院 リハビリテーション室, 2.心臓病センター榊原病院 心臓血管外科)

【背景】心臓手術後急性期は安定した血行動態維持が最優先となる為,十分な身体活動量や自動的筋収縮獲得を目指した早期リハビリテーションの実施は困難とされている.近年,集中治療領域において神経筋電気刺激療法(NMES)による筋力維持が注目されているが,推奨されるエビデンスとしては乏しいのが現状である.【目的】心臓手術後周術期におけるNMESが筋量保持に与える影響について検討した.【方法】 2017年8月から2018年7月までに当院で施行した待機的心臓手術症例のうち,術前に歩行自立が可能であった連続72例〔年齢:72歳(44~86歳),男性50例,女性例22例〕を対象とした.対象症例を無作為にNMES介入群と非介入群で1:1に割り付け,通常の術後リハビリテーションに加え,介入群には術後第1病日(1POD)から7PODまで,両側大腿四頭筋に対し1日30分のNMESを施行した.NMESの強度は患者が耐用できる強度までとし,最大80mAとした.筋厚の評価には超音波診断装置を用い,術前日と7PODに測定した.筋厚の測定部位は,左上腕(肩峰と肘頭の中点)と左大腿(大転子と外側顆の中点)を,それぞれ安静時と収縮時に測定し,筋厚の推移を評価した.また,両群においてICU滞在日数と在院日数,リハビリテーション経過として離床開始日,歩行開始日,歩行自立日を比較検討した.【結果】大腿における安静時の筋厚は,介入群では術前と7PODで26.9±6.0mm vs 26.3±5.8mm,非介入群では25.7±6.1mm vs 24.0±5.1mmと非介入群で有意な低下を認めた(p<0.01).また、収縮時の筋厚に関しては介入群で術前と7PODで34.2±7.2mm vs 33.0±6.8mm,非介入群で34.8±6.8mm vs 30.8±6.0mmと両群間で有意差を認めた(p<0.001).上腕における筋厚は,安静時と収縮時ともに両群に有意差はなかった.また,ICU滞在日数と在院日数,リハビリテーション経過において両群間で有意差を認めなかった.【結論】心臓手術後におけるNMESの早期介入により,周術期における大腿四頭筋の筋量低下を回避する可能性が示唆された.心臓手術後急性期の筋力低下は術後早期回復遅延や予後増悪につながる可能性があり,NMESは有用な一手段であると考えられた.