第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

ショック

[O13] 一般演題・口演13
ショック01

2019年3月1日(金) 16:40 〜 17:15 第7会場 (国立京都国際会館1F Room E)

座長:小野 聡(東京医科大学八王子医療センター)

[O13-2] 胸骨圧迫による肝損傷から腹部コンパートメント症候群をきたした一救命例

伊藤 恵1, 奈良 岳志1, 石井 隆時1, 石井 恵子1, 富岡 義裕2, 高橋 佳奈子1, 竹島 元1, 金澤 正浩1, 小澤 拓郎1, 松本 晶平1 (1.SUBARU健康保険組合太田記念病院, 2.羽生総合病院)

【背景】胸骨圧迫による肝損傷は稀ではあるが致死的となりうる病態である。肝損傷から、腹部コンパートメント症候群を認めた稀な症例を経験したので報告する。【臨床経過】症例は70歳男性、病院の受診歴がなく病歴は不明だった。呼吸苦、冷汗、嘔気を主訴に救急要請あり、救急車収容後、心室細動となった。電気的除細動を実施するも洞調律を維持できず、CPRを実施しながら当院へ搬送された。来院時、心室細動波形であり、気管挿管、V-A ECMOを導入した。V-A ECMO導入後、電気的除細動を実施し洞調律へ復帰した。心筋梗塞が疑われたためCAG実施し、#2の完全閉塞を認め薬剤溶出性ステントを留置、IABP挿入しICUへ入室した。ICU入室後、貧血の進行、腹部膨満が進行したため造影CTを行ったところ、肝損傷による腹腔内出血と診断された。肝損傷の原因は心臓マッサージによる胸骨圧迫と考えられた。血管塞栓術を考慮したが、血管造影では出血源は認めなかった。血行動態は比較的安定しており、止血のためV-A ECMOは抜去した。膀胱内圧29mmHgと上昇あり腹部コンパートメント症候群と診断した。アスピレーションキットを腹腔内に留置し、緩徐に排液を行った。腹腔内圧の過度な上昇がない程度にドレナージを行い2時間で4000mlの血性腹水が排液され、その間にRCC10単位、FFP10単位、PC20単位輸血を行うが、血圧上昇乏しく、貧血改善みられないため、来院10時間後に開腹手術となった。開腹すると肝前面に複数の裂傷あり、同部位からの静脈性出血を認め、ダメージコントロール手術を行った。血行動態安定し手術から第3病日に閉腹し、その後も貧血進行なし、第4病日にIABP抜去。徐々に意識レベル改善し第8病日に抜管。全身状態改善し第25病日に独歩退院し外来フォロー中である。【結論】胸骨圧迫後には肝損傷を念頭におく必要があり、特に抗凝固療法を実施する場合には注意が必要である。腹部コンパートメント症候群にいたる可能性もあり、胸骨圧迫後の腹部の検索は有用であると考えられる。