第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

感染・敗血症 症例

[O17] 一般演題・口演17
感染・敗血症 症例01

Fri. Mar 1, 2019 10:00 AM - 10:50 AM 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:小林 敦子(宝塚市立病院感染対策室)

[O17-3] 抜歯が原因で生じたと考えられた敗血症性肺塞栓症の1例

林 洋輔, 橋田 知明, 矢崎 めぐみ, 渡邉 栄三 (東千葉メディカルセンター 救急科・集中治療部)

【はじめに】敗血症性肺塞栓症は,敗血症や全身各所の感染巣で生じた感染性の塞栓子により肺塞栓を来たす比較的稀な疾患である.原因として右心系の感染性心内膜炎や血栓性静脈炎,カテーテル感染などが挙げられるが,これらを伴わないものの報告もある.今回我々は抜歯が原因で生じたと考えられた敗血症性肺塞栓症の1例を経験したため報告する.【症例】29歳男性.炎症反応とCre上昇,血圧低下のため前医より紹介となった.来院時意識清明であったが,HR 83bpm,BP 84/49mmHg,SpO2 98%(O2 2L nasal),BT 36.2℃で,強い呼吸苦を訴えていた.血液検査は,WBC 34030/μL,CRP 20.54mg/dL,IL-6 23218.0pg/mL,PCT 67.25ng/mlと炎症反応高値であり,BUN 131.2mg/dL,Cre 4.49mg/dLと腎機能障害を認めた.CT検査では両側に散在する結節影を認めた.以上より重症肺炎による敗血症,急性腎不全の診断でICU入室となった.NIPPVによる呼吸補助とMEPM,LVFXの投与を開始し,翌日からAN69ST膜によるCHDFを開始した.全身状態は徐々に改善し,第4病日にNIPPVからNHFに変更,CHDFを離脱し,第11病日にNHFを離脱した.前医での血液培養からはStreptococcus pyogenesが,来院時の痰培養からはMRCNSが検出されたため,抗菌薬は第5病日からABPC/SBTに変更し,第7病日からLZDを追加して継続した.第18病日に提出した血液培養が陰転化したため同日LZDを中止,第31病日にABPC/SBTを中止後も炎症の再増悪を認めなかった.原因検索では,心エコーで感染性心内膜炎を疑う所見はなく,その他の感染巣も認めなかった.発症2週間前に抜歯したことが判明し,これが進入門戸と考えられた.後遺症は認めず,第38病日に独歩で退院となった.【結語】敗血症性肺塞栓症は,早期診断により迅速な抗菌薬投与がなされれば良好な経過を辿るが, 重症化し死に至る場合もあるため注意が必要である.