第46回日本集中治療医学会学術集会

Presentation information

一般演題(口演)

感染・敗血症 症例

[O19] 一般演題・口演19
感染・敗血症 症例03

Fri. Mar 1, 2019 11:40 AM - 12:20 PM 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:相引 眞幸(愛媛大学大学院)

[O19-3] 重症感染症に対する長期抗菌療法中に発症する多剤耐性菌を念頭とした持続高濃度抗菌療法のこころみ

蒲原 英伸1, 谷川 広紀1, 徳永 健太郎1, 江嶋 正志1, 菊池 忠1, 成松 紀子1, 鷺島 克之1, 山本 達郎1, 尾田 一貴2 (1.熊本大学医学部附属病院 集中治療部, 2.熊本大学医学附属病院 薬剤部)

【はじめに】2015年世界保健機関総会にて薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)に関するグローバル・アクションプランが掲げられ薬剤耐性に関する取り組みが行われている。救急・集中治療領域における重度熱傷や敗血症などの重症感染症の治療の実情として、救命を念頭としているためカルバペネムのような広域抗菌薬が長期間投与され、MDRPやMDRAなどの多剤耐性(MDR:Multidrug Resistant)菌が出現し、その結果、感染制御に難渋し多臓器不全へ移行し不幸な転帰をきたすことを経験する。ペニシリン発見者のAlexander Flemingは、漫然と低濃度の抗菌薬使用により、耐性菌を出現の脅威を当時から警告している。今回、我々は2剤耐性化した緑膿菌やアシネトバクターを対象に高濃度持続抗菌薬投与によりMDR出現を制御する可能性が示唆されたので報告する。【方法】MDRPやMDRAへ移行する可能性が高い、2剤耐性化した緑膿菌やアシネトバクターを保菌し、感染症としての治療介入が必要な症例に対して、MEPM高濃度持続投与を行った。濃度設定はMIC値の5倍濃度を設定し、TDMとしてHPLC法によりMEPMの血中濃度を確認した。投与期間は2週間とし、その後の継続については投与後の種々の感染情報から決定した。【結果】感染制御に難渋し、MDRAおよびMDRPの発症が懸念された症例に対して介入した。代表症例1. 心臓外科術後心不全に合併した敗血症性ショックの女性、感染源として肺炎が予想され、気管支液のサーベイランスから2剤耐性(FQ,IPM)緑膿菌を認めていた。CHDF導入下、TOBの1回/日投与とMEPMのMICの5倍投与量を設計し持続投与を行った。TDMにてMEPMの濃度を確認したが、推定値に達していた。2週間投与し、MDRPの出現なく、感染制御も可能であった。代表症例2. 下肢コンパーメント症候群に合併した軟部組織感染症の男性。広範囲の減張切開が施行され、壊死組織周囲の浸出液のサーベイランスから2剤耐性(FQ,IPM)アシネトバクターを認めた。CHDF導入下、TOBの1回/日投与とMEPMのMICの5倍投与量を設計し持続投与を行った。アシネトバクターのMDRAへの移行はなく、下肢切断も免れた。【考察・結果】救命を要する感染症の治療は、長期間、広域抗菌薬の使用頻度が多く、MDR菌の発生リスクが高い。低濃度感作によるMDR菌の発症を予防するためにも、antibiogramからのMICが高い傾向を参考とした高濃度抗菌薬持続投与法は、軟治性感染症において新たな戦略となりえる。