第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

感染・敗血症 症例

[O20] 一般演題・口演20
感染・敗血症 症例04

2019年3月1日(金) 14:00 〜 14:50 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:端野 琢哉(関西電力病院)

[O20-4] ガス産生性肝膿瘍・気腫性膀胱炎を呈しVA ECMO補助下緊急手術にて救命し得た敗血症性ショックの1例

重田 健太, 増野 智彦, 濱口 拓郎, 佐々木 和馬, 金谷 貴大, 富永 直樹, 瀧口 徹, 金 史英, 宮内 雅人, 横田 裕行 (日本医科大学附属病院 高度救命救急センター)

はじめに;ガス産生性肝膿瘍および気腫性膀胱炎はともに比較的稀な疾患である。今回我々は双方を併発し急速進行性に敗血症性ショックを呈し、切迫する心停止に対してVA ECMOを導入し救命し得た症例を経験したため報告する。症例;83歳女性、糖尿病の既往がある患者。腹痛・下痢・嘔吐症状のため前医へ救急搬送され、CT検査で肝内にガス像を認めたため精査加療目的に当院へ紹介となった。病歴;来院時SOFA9点、炎症所見高値、肝胆道系酵素異常高値を認め、造影CT検査で肝十二指腸間膜周囲の気腫像、肝右葉内のモザイク状の造影不良域(内部にガス像あり)、膀胱壁在性気腫を認めた。腹膜刺激兆候強く、腹膜炎に至っていると判断、敗血症性ショック・肝膿瘍・気腫性膀胱炎・消化管穿孔の疑いで試験開腹術施行とした。全消化管の検索で明らかな穿孔は認めず、視診上、肝・膀胱に特記事項は認めなかった。開腹時に軽度混濁した腹水が認められ、肝膿瘍に相違しない所見と考えられた。術後も敗血症性ショックは進行性に悪化し、循環作動薬への反応性乏しく心収縮もEF10%程度まで低下し心停止が切迫していると判断し、VA ECMOを導入。前述の採血、画像検査より感染源として胆管炎の可能性も否定できないと判断し、VA ECMO補助下に再開腹し、総胆管にTチューブ留置を行った。術後自己心機能はさらに低下。脈圧狭小化したため、冠血流増加目的にIABPを挿入。同時に冠動脈造影を行ったが優位狭窄は認めなかった。敗血症に伴う心機能低下、たこつぼ心筋症と診断し、VA ECMO、IABP補助下に集中治療管理を継続した。その後、第8病日にVA ECMO離脱、第11病日にIABP離脱・気管切開施行、第17病日に人工呼吸器を離脱した。考察;ガス産生性肝膿瘍および気腫性膀胱炎を併発した症例の報告は非常に稀であり、本邦での報告はない。双方ともに糖尿病との関連が指摘されており、本症例もこれに該当した。本症例では血液・尿・胆汁培養のすべてからE.coli(ESBL)が検出され、臨床経過からは胆管炎が原因の血行感染によりガス産生性肝膿瘍・気腫性膀胱炎へ至ったと想定された。また本症例においてはVA ECMO導入なくして救命はし得なかったと考えられ、VA ECMOは敗血症性ショックにおける循環補助として、また手術を含む積極的治療介入を可能にする手段として有効であると考えられた。