[O50-3] 当院における心肺停止後の予後因子の検討
【はじめに】バイオマーカーによる心肺停止後症候群(post cardiac arrest syndrome:以下PCAS)の予後予測に関する研究が積極的に行われている。しかし現時点で正確な予後因子となるバイオマーカーは存在せず、その他の手法(画像検査・電気生理学的検査)などを併用して他覚的に評価をしているのが現状である。今回、当院における心肺停止症例において来院時の血液検査による予後予測の検討を行い、PCASに対する治療適応の有無を考慮する一助になる可能性を検討した。【対象と方法】2015年4月から2018年3月までに当院で経験した心肺停止症例を対象とし、自己心拍再開の有無によって来院時の血液検査を比較検討した。血液検査の内容は、一般的な生化学検査の他に先行研究で言われているNSE、アンモニアも含めて検討を行った。統計学的有意差はp<0.05とした。【結果】検討対応症例は116例であり、27例が自己心拍再開例、89例が死亡症例であった。心拍再開した症例のうち、原因として内因性が19例、外因性が8例であった。自己心拍再開症例ではアンモニア、乳酸値、PT-INRが死亡例と比較して統計学的に有意差を認めた。しかし、外因性心肺停止では、外傷も含まれるため様々な要因が重なると考えられた。そのため、内因性心肺停止のみ検討を行った。その結果、BNP、Ca、CK-MM、K、乳酸値、LDH、アンモニア、NSE、pH、T-Bilで統計学的有意差を認めた。【考察】血中アンモニア、乳酸は嫌気性代謝の過程で産生されるため、組織灌流の指標となり、心停止時間に比例して上昇すると考えられている。pHも同様の理由で差を認めたと考えられた。有意差がでた検査結果の中には、NSEやアンモニア、乳酸値のように先行研究で検討されている検査結果もあった。当院では、NSEはCut off値24.9(感度 0.639、特異度 0.867、AUC 0.795)、アンモニアはCut off値107(感度 0.9、特異度 0.50、AUC 0.718)であった。NSEやアンモニアは予後不良因子として研究されているが、心肺停止症例の自己心拍再開の予測因子にもなりうる可能性が示唆された。