[P100-3] 当院ICUにおけるPICS予防への取り組み~ICUダイアリー、退室後訪問を通して~
【背景】近年、PICSを予防する一つの手段としてICUダイアリーが取り上げられ、それはICUでの患者の記憶の整理・補いといった効果がある。今回、ICUに48時間以上入室した患者にICUダイアリーの記載と退室後訪問を実施し、得られた結果と今後の課題について報告する。【臨床経過】2018年5月~8月において、48時間以上ICUに入室した患者に、入室日から退室日まで、毎日ダイアリーの記載を行った。内容は、リハビリの進行状況、面会時の患者・家族の様子や患者への励ましの言葉を記載した。また患者にとってプラス面だけでなく、術後合併症を起こした場合もありのままの記載を行った。ダイアリーは退室時に手渡した。その後、退室3日目を目安に退室後訪問を行い、ICUでの思いや体験、感じたことを自由に話してもらった。またICUでの記憶の有無、退室後にダイアリーを読んだかの2項目については全員に質問を行った。その結果、対象者25名のうち、ICUでの記憶が「ある」と答えた患者は46.2%、「ない」と答えた患者は27.0%、「一部記憶がある」が3.8%、「どちらとも言えない」は23.0%であった。退室後に39.3%の患者がダイアリーを読んでいたが、28.6%の患者は読んでおらず、紛失した患者やダイアリー自体を知らない患者は32.1%も見られた。自由発言からは、「管で痰をとられるのがしんどかったことを覚えている」、「ICUでの記憶は全然ない」という意見があった。また合併症を起こした患者からは「ICUに居たことを思い出そうと思って何度もダイアリーを見返した。涙が出そうになった」、ダイアリー受け取りの拒否はなかったが、「振り返らずにこれからのことを考えたい」という意見もあった。また亡くなられた患者の家族は涙を流しながら「私たちと看護師さんと本人が頑張ってくれた光景がよみがえります。ずっと大切にします。」という言葉が見られた。【結論】今回の取り組みではICUダイアリーが患者の記憶の欠如を補う手段となりPICS予防に繋がったか評価することは難しいが、ICUという非日常的な環境下でも、ダイアリーを記載したことで患者・家族から喜びや感謝の言葉など肯定的な意見を得ることが多かった。またPICSは退院後にも及ぶ長期的な問題であり、ICUダイアリーを活用した患者の退院後の動向についてもフォローしていく必要がある。今後は退院後の外来受診の際などを利用してPICS予防に向けたフォローアップ支援など検討していきたい。