第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

循環 症例

[P39] 一般演題・ポスター39
循環 症例07

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 2:50 PM ポスター会場19 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:石原 嗣郎(日本医科大学武蔵小杉病院循環器内科)

[P39-2] 重症大動脈弁狭窄症に対する外科的大動脈弁置換術と経カテーテル大動脈弁留置術の術後急性腎障害の検討

鴨下 方彦, 泉 雄介, 内田 吉将, 茶谷 高太朗, 勝 啓佑, 大橋 浩三 (愛知医科大学病院 臨床工学部)

【背景】重症大動脈弁狭窄症(AS)に対し、人工心肺を用いた外科的大動脈弁置換術(SAVR)が標準治療として長年行われてきたが、近年カテーテルを用いた低侵襲な治療として、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)が盛んに行われるようになってきた。しかし、両者とも術後の合併症の一つに急性腎障害があげられる。SAVRでは人工心肺関連急性腎障害(CPB-AKI)、TAVIでは造影剤腎症(CIN)が原因として考えられる。
【目的】重症ASに対して行われたSAVRとTAVIで、術後AKI発症に差があるか後向きに比較検討した。
【対象・方法】対象は2016年1月から2018年8月までに行われた重症ASに対する治療を、SAVR群(単弁置換のみ)とTAVI群の2群に分けた(ただし、透析患者は除く)。CPB-AKIの診断にはKDIGO分類を使用し、CINのAKI診断にはヨード造影剤使用に関するガイドライン2012を使用した。検討項目は、年齢[歳]、術前eGFR[mL/min/1.73m2]、術前Cr[mg/dL]、術前EF[%]、弁口面積[cm2]、Vmax[m/s]、大動脈弁平均圧格差[mmHg]。手術時間[min]、術中尿量[mL/kg/h]、術後AKI有無。p<0.05を有意差ありとした。
【結果】SAVR群15例/TAVI群10例。『検討項目:中央値(四分位範囲)』 年齢:75.0(71.25-77.75)/85.5(84.25-87.00)[p<0.05]、術前eGFR:75.0(64.5-83.5)/47.7(41.0-58.0)[p<0.05]、術前Cr:0.75(0.605-0.855)/0.925(0.850-0.995)[p<0.05]、術前EF:67.4(62.00-71.15)/73.8(66.23-75.68)[ns]、弁口面積:0.8(0.63-0.80)/0.7(0.53-0.70)[ns]、Vmax:4.75(4.53-4.98)/4.19(3.98-4.86)[ns]、大動脈弁平均圧格差:53.5(47.25-56.75)/46.0(38.00-54.75)[ns]。手術時間:329(290.5-364.5)/120(100.5-127.0)[p<0.05]、術中尿量:5.23(4.07-9.08)/2.15(1.47-2.91)[p<0.05]、術後AKI:2例 / 2例[ns]
【考察】SAVR群は、年齢が若く術前の腎機能は良いが、TAVIよりも手術侵襲度が高いため、AKIを起こしやすいと考えられる。その一方で、TAVIは低侵襲な治療であるが、現在の適応は高齢や外科的手術リスクが高い患者となっているため、TAVI群には高年齢などによる低腎機能患者が多く、AKIを起こしやすいと考えられる。
【結語】重症ASに対する治療は、SAVRでもTAVIでも術後AKI発症率は同等であった。