[P47-4] 人工呼吸中の身体拘束に関する実態と影響因子に関する検討-Webアンケートによる全国調査結果
【背景】人工呼吸管理下の患者に対する身体拘束は、倫理的に問題があるのみならず、せん妄やPTSDの発症にも関連している。しかし、日本における身体拘束の実態はあまり知られていない。【目的】人工呼吸管理下の患者に対する身体拘束の実態を調査するとともに、身体拘束の頻度とその関連する要因を探索。【方法】2018年5月11日から10日間、集中治療室(ICU)に勤務する看護師を対象にWebを用いた身体拘束に関するアンケート調査を実施。対象とするICUは看護師1名に対する患者数が2名以下の施設に限定した。アンケートは施設の特性、ICUの管理方式、日勤帯の看護師の勤務人数、身体拘束の頻度などの16項目で構成された。各ICUから1回答のみ受け付けた。記述統計のほか、身体拘束が頻繁に行われるICU(>75%で身体拘束を行う)とそうでないICUに分け、背景因子を探索した。【結果】175の回答を得、46回答を除外、最終的に129の回答を分析した。覚醒し、穏やかな人工呼吸管理下の患者に対し、あまり身体拘束を行わない(<25%)ICUは49.6%である一方、18.6%のICUが同様の状態でも頻繁に抑制する(>75%)と回答した。身体拘束が頻繁に行われるICUとそうでないICUでは、身体拘束に関するプロトコルの運用、病院の属性(大学病院)、Open ICU、個室の比率に有意差は認められなかった。身体拘束が行われるICUではICU病床数が有意に多く(median [IQR], 8 [6-10] vs 10 [7.6-13.3], p=0.01)、また、日勤帯の看護師1名あたりの病床数が有意に多かった(1.0 [0.9-1.3] vs 1.2 [0.9-1.5], p=0.004)。しかし、身体拘束の頻度(>75% vsそれ以外)を従属変数とし、ICUの病床数、日勤帯の看護師1名あたりのICU病床数、病院の属性(大学病院)を説明変数としたロジスティック回帰分析では、いずれも有意な差は見られなかった。【結語】ICUの特性や管理方式、看護師のマンパワーと身体拘束の頻度に関連はみられなかった。看護師のマンパワーに関しては、看護師1名に対する患者数が2名以下の施設に限定したことが影響を及ぼしている可能性がある。人工呼吸管理下の患者に対する身体拘束の頻度は施設によりばらつきがあった。このことは身体拘束を減少させる取り組みを行う余地があることを示唆していた。