第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

安全・安楽

[P47] 一般演題・ポスター47
安全・安楽

Sat. Mar 2, 2019 11:00 AM - 11:50 AM ポスター会場6 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:宮原 聡子(大阪市立総合医療センター ICU1)

[P47-5] ICUにおける振り返り事例で行う多職種倫理カンファレンスの意味―チームで患者の意思決定を支えた1症例―

鈴木 壯, 内藤 亜樹 (北里大学病院 集中治療センター)

【背景】A病院、集中治療センターでは、医療者が倫理的ジレンマを感じた事例の振り返りをJonsenの4分割表と、生命倫理の4原則に沿って多職種倫理カンファレンスとして定期的に行っている。今回、臨床の場面で心停止のリスクが高い患者のDNARの方針決定に関して、集中治療医と集中治療看護師(以下集中治療チーム)が倫理的問題に気づき、速やかに介入できた症例を報告する。【臨床経過】A氏 70歳代 男性 腸症関連T細胞リンパ腫にて入院中。病棟にてSepsisとなり、持続的腎代替療法(以下CRRT)導入目的にてICU入室となった。患者に意識障害があり、家族の代理意思決定でDNARの方針となった。また、機械が停止した際には、CRRTは再開しない方針となった。ICU入室2日目、患者の意識は改善したが、CRRTのダイアライザーが限界を迎えていた。 集中治療チームは、患者の意識が改善したにも関わらず、代理意思決定のままであることに疑問を感じた。この疑問に対し、主治医から「3日後にICを行う予定である。」との返答があった。しかし、CRRTが中断となれば心停止の可能性が極めて高く、3日以内に患者の意向を確認しないままDNAR指示を履行する恐れがあるため、再度主治医に上申し、主治医を交えてのカンファレンスを開催した。その結果、数時間後に本人を交えたICが行われ、患者の意思を確認したうえで、DNARとその他の治療制限を決定するに至った。【結論】振り返り事例で行う多職種倫理カンファレンスでは、治療方針の決定に関する事例が多く取り上げられる。「救急・集中治療における終末期に関する提言」では、「患者が意思決定能力を有している場合や、本人の事前指示がある場合、それを尊重すること」とされている。また、Jonsenの4分割表における、患者の意向の項目で、「患者の意思決定能力はなかったか。」「事前意思表示はなかったか。」など、患者の意思を確認するために何が出来たのかという話題が必ず挙がっていた。この経験から、患者の意思を確認することの必要性がチームに強く認識され、今回の事例での倫理的問題に気が付くことができた。そして、問題解決までに時間が限られている状況であっても、チームでディスカッションし、行動することができた。振り返り事例で行う倫理カンファレンスは、今後起こりうる倫理的問題を抱えた事例に対して、チームの倫理的な問題に対する解決能力を高めるために必要な取り組みであると言える。