第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

呼吸 研究

[P48] 一般演題・ポスター48
呼吸 研究01

Sat. Mar 2, 2019 11:00 AM - 11:50 AM ポスター会場7 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:下山 哲(自治医科大学附属さいたま医療センター救命救急センター)

[P48-3] 腹臥位療法による有害事象の発生要因と対策の検討

仁科 由利恵, 北別府 孝輔, 中野 智子, 藤田 淳, 岡崎 葵 (倉敷中央病院 集中医療センター)

【背景】2013年の多施設前向き無作為化比較試験では、長期にわたる腹臥位療法の早期適用により28日および90日の死亡率が有意に減少したと報告されており、腹臥位の有効性についてはすでに検証されている。当院ICUでもARDSなどの重症呼吸不全に陥った患者に対して、冒頭の研究方法を参考にした約16時間の腹臥位療法をおこなっている。しかし、臨床における有害事象として「持続する発赤(褥瘡)」、「体内留置器具による皮膚損傷や水泡形成などの皮膚トラブル」、「眼球結膜の充血・出血」などが確認されており問題視している。今回、過去の腹臥位療法実施症例を振り返ることで有害事象の原因と対策の検討が必要と考えた。【目的】腹臥位療法による有害事象の発生要因と対策を検討する。それにより、安全で効果的な腹臥位療法の実施に繋がると考える。【方法】研究デザイン:後ろ向き観察研究、対象患者:平成29年6月以降に当院ICUで腹臥位療法を実施した患者8名、データ収集項目:BMI、有害事象の有無、有害事象の内容、有害事象発生場所、浮腫の有無、水分出納バランス、骨突出の有無、関節拘縮の有無、栄養状態、腹臥位中の排便の有無、出血傾向の有無、体内留置器具の場所と種類、体内留置器具本数、腹臥位実施日数、腹臥位療法中の顔の向きや体位変換・除圧の間隔を調査した。単純集計、統計ソフトによる統計学的分析をおこなった。本研究は、自施設の看護研究倫理審査会の承認を得ておこなっている。【結果】有害事象は8症例中4症例(5件)発生していた。有害事象の種類は、持続する発赤(褥瘡)が2件、皮膚損傷や水泡形成などの皮膚トラブルが1件、眼球結膜の充血・出血が2件であった。単純集計結果より関係や差がありそうな項目に対してカイ二乗、t検定をおこなったが、有害事象の有無とBMI(p=0.14)有害事象の有無と浮腫(p=0.10)に有意差はなかった。腹臥位中の除圧は全例1時間毎に行っていたが、顔に関しては毎回除圧しているかどうかは不明であり、体幹や四肢の除圧にとどまっていた可能性はある。【結論】今回の研究で、腹臥位療法時の有害事象の発生要因に有意差はみられなかった。しかし、単純集計の結果より、BMI高値や浮腫ありの場合に有害事象が出現しやすい可能性、眼球結膜の充血や眼内出血予防のための顔の除圧も必要である可能性が示唆された。これらを踏まえたうえでの腹臥位療法実施が望ましいと考える。