第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

家族支援

[P49] 一般演題・ポスター49
家族支援

2019年3月2日(土) 11:00 〜 11:50 ポスター会場8 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:川上 悦子(長崎大学病院看護部)

[P49-3] 終末期を迎える子どもにとって最善の利益となる意志決定にむけた支援

立石 愛, 川西 貴志, 梶西 由美, 高橋 千鶴 (兵庫県立尼崎総合医療センター)

【背景】 終末期の目標は家族と医療チームが「子どもの最善の利益」を最優先に考え、子どもや家族の尊厳、権利、生命を尊重された意思決定をすることと言われている。終末期を迎える子どもの両親がキリスト教を信仰しており、子どもの最善の利益となる意志決定を医療者と両親がともに考えることが出来ない事例に遭遇した。宗教を信仰する両親に対する終末期の関わりについて事例から得たことを報告する。【臨床経過】 患者は7歳女児。急性脳症で入院し、集中治療を受けたが状態改善せず、122日目に死亡退院となった。両親ともにキリスト教を信仰していた。 治療方針や看取りについて両親の意向を確認したが、イエス様に委ねると話され、両親の本心が明らかにされなかった。医療者は両親と終末期のあり方についてともに考えようとしたが、両親から語られることがなかった。両親の本心が明らかにならない中で、今後の医療が子どもの最善の利益となるような終末期のあり方について、両親とともに考えることが出来ないことを困難に感じた。そこで医療チームで話し合い、信仰上の理由により本心を言葉にできないのではないかと考え、両親の言葉をありのままに受け止め見守ることとした。治療に対する意向について両親に確認することはせず、現状の理解が出来るよう丁寧な説明を繰り返し行った。 両親は、信頼している牧師とともにベッドサイドでお祈りすることを希望された。医療者は、両親が子どものためにお祈りをしたいと考えているのならば、それを支援することが子どもの最善の利益に繋がると考えベッドサイドでのお祈りを許可した。両親が希望されることに対して、否定せず見守りながら両親の変化を待った。面会後、両親はイエス様に委ねていたつもりであったが、実際には助けて欲しいと考えており、本心をイエス様を通して表現していたことや、自分たちで何とかしようと抱え込んでいたことに気づき、このような機会が与えられたことに感謝したと話した。 今回の関わりが、両親の意思決定やスタイルを尊重し自分たちで意思決定するための支援につながった。また、両親に寄り添い傾聴することが、両親の権利を擁護することにつながった。【結論】 両親の終末期に対する思いを引き出し、子どもの最善の利益を最優先に考えるためには、両親の意思決定のスタイルを尊重し、両親が自ら意思決定することが出来るように寄り添い支援する必要がある。