[P51-4] ICU入室後、不穏状態に至ったVAD植込み術後患者 症例報告
【背景】ICUは一般的にせん妄を誘発するファクターが多く、せん妄がおこりやすい。当院ICUに入室した体内式補助心臓(以下 VAD)植込み患者のうち2症例が術後に強い不穏・せん妄状態に陥り、極度の混乱状態に至った。そこで、VAD植込み術後患者の不穏・せん妄になった症例での、患者の受容過程の反応の変化を振り返った。術後の不穏・せん妄状態を発症した誘因について報告する。【臨床経過】A氏、50歳台の女性。心サルコイドーシスにて10年加療。6ヶ月前より人工心臓の教育入院を経て、VAD植込み術施行目的にて入院。予定手術にて施行。術前より日常生活はほぼ自立されていた。B氏、50歳台の女性。特発性拡張型心筋症にて8年加療しCRT-D植込みにて入院するが、改善みられず。急遽VAD植込みの方針となり、2ヶ月後に施行。術前は安静時でも疲労感強く、ADLに介助が必要な状況であった。両名の退院後、外来受診日に面談を行い、現在のボディイメージ、術後どこから記憶があるか、医療者への要望、術後イメージの違い、最も苦痛であったことについて聴取。A氏より「VADが身体の中に入っていること自体は ある程度覚悟できていたし、そこまで抵抗はなかったが、手術が終わってこんなに自分で動けないものだとは思わなかった。」B氏より「直前までそこまで具合が悪い自覚がなかったから、VAD入れるってなってどうして?なんで?って感じだった。」といった発言が聞かれた。A氏は入院当初よりVAD植込み術の説明を受けており、術前からVAD植込み術への処置に対して前向きに取り組め、術前から退院後の患者教育へも積極的に取り組めていた。しかし、術後のADL低下に伴い、術前にできていた自己管理ができなくなってしまったこと、術前にはADL低下する充分なイメージができていなかったことから、現状に失望し「衝撃」を受け、不穏状態に至る誘因となってしまったと考察された。B氏は、急な状態悪化に伴い、入院当初には予想されていなかったVAD植込み術を急遽 処置として行うことになり、術前から充分な術後イメージが形成されないまま処置が施行され、術前との身体状態のギャップに強い「衝撃」を受け、不穏状態に至る誘因となってしまったと考察された。【結論】2つの症例では、術後の不穏・せん妄状態を誘発した原因が異なっていた。・術後ADL低下のリアリティショック・VAD植込みによるボディイメージの違い であった。