[P54-5] ICUにおける慢性疾患を合併した消化器外科術後患者の鎮痛と鎮静
【背景】糖尿病（DM)，高血圧（HT)，認知症（MI)などの慢性疾患がある患者は，外科術後の鎮痛鎮静に差があると推測される．【目的】慢性疾患を合併または合併しない患者の鎮痛鎮静との差を明らかにしたい．当院倫理委員会の承認を得た．開示すべきCOIはない．【対象】平成25年4月1日～平成29年3月31日．手術後ICU入室した患者：142人【方法】後方視的研究で以下の項目を調べた．患者背景（性別，年齢，疾患，既往歴），術式，麻酔法，帰室時の痛み．疼痛評価はNumerical Rating Scale （NRS：痛みがない～最悪な痛み，0～10）を用いた．鎮痛薬はNSAIDs,アセトアミノフェン，フェンタニル，塩酸ペンタゾシン，ブプレノルフィン塩酸塩を使用し，鎮静薬はデクスメデトミジン（DEX)，ヒドロキシジン，プロポフォールを使用した．フィッシャー検定と多重比較で統計処理を行った．【結果】消化管術後110人，胆肝膵術後35，その他5であった．全身麻酔140，全身麻酔併用硬膜外麻酔群106だった．DM：21．HT：63．MI：10（認知症7，パニック障害1，統合失調症2）であった．帰室時のNRS（0：79人，1：7，2：3，3：4，4：3，5：5，6：6，7：5，8：8，9：2，10：10）， 既往歴別でのNRSでは，DM（0：13人，1：2，2：0，3：0，4：2，5：1，6：0，7：1，8：0，9：0，10：2)．HT（37人，4，1，3，3，3，2，1，2，1，4)．MI（0：1：6，1)，疼痛不明：1であった．追加の鎮痛剤の使用はDM（NRS4：2人，5：1，7：1，10：2）であった．HT（NRS1：4人，3：1，4：3，5：3，6：2，7：1，9：1，10：4）だった．MIの患者は鎮痛剤の使用は0だった. 既往歴のない患者（NRS0:3人，3：2，5：2，6：4，7：3，8：5，9：1，10：4）であった.DMのNRS4以上の鎮痛剤使用は6人，HTの患者はNRS4以上鎮痛剤の使用は16人．MIの患者は鎮痛の追加はなかった.．慢性疾患を持つ患者でのNRSに有意差はなかった．鎮静剤の使用はDM16/21人,せん妄はいなかった．HT34/63人，せん妄はいなかった.MIは10/10人が使用しており，鎮静剤1種で効果があった患者は8人，2種併用が1人，鎮静剤から麻酔薬への変更した患者が1人だった.鎮静剤使用の差はDMとMI，HTとMIで有意差があった．【結論】慢性疾患合併の有無で鎮痛に差はなかった．鎮静剤ではMIとHTおよびDMで有意差があった．MI患者に対しては，鎮静を早期に行うためと考えられた．またDEXを投与することで，鎮痛薬の減量が計られたと推察した．