第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

内分泌・代謝

[P77] 一般演題・ポスター77
内分泌・代謝02

Sat. Mar 2, 2019 2:00 PM - 2:50 PM ポスター会場15 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:浅賀 健彦(香川大学医学部付属病院・集中治療部)

[P77-2] 高度な心機能低下と横紋筋融解症を合併した水中毒患者の一例

和田 浩太郎, 小林 浩之, 渡邊 麻衣, 赤澤 杏奈, 河野 圭史, 木田 好美, 石川 友規, 石井 瑞恵, 岩崎 衣津, 福島 臣啓 (岡山赤十字病院 麻酔科)

【背景】水中毒患者は過度の飲水によって循環血漿量が増加し、うっ血性心不全や低ナトリウム血症、痙攣や意識障害を発症する。急激なナトリウム濃度補正により中枢神経障害や横紋筋融解症が合併するという報告があり、ナトリウム濃度変化には注意が必要である。今回、高度な心機能低下と横紋筋融解症を合併した水中毒患者の一例を経験したため報告する。【臨床経過】症例は31歳男性。統合失調症などで精神科病院に入院中に痙攣および意識障害を発症し紹介となった。全身性痙攣とGCS:E1V1M4の意識障害、誤嚥性肺炎が見られ救急外来で気管挿管および人工呼吸管理とした。Na+110mEq/Lと低下あり水の多飲歴から、水中毒による低ナトリウム血症と診断し集中治療室に入室した。入院後に収縮期血圧80mmHg以下の低血圧が出現し、心エコー検査で下大静脈拡張と呼吸性変動の消失、左室駆出率17%の全周性壁運動低下を認めうっ血性心不全と考えた。ドパミン2-4γとノルアドレナリン0.1γにより平均血圧60mmHg以上を維持し、利尿薬を使用せずに200ml/h以上の多尿となったため、高張食塩水は投与せずに入院翌日にNa+132mEq/Lまで上昇した。来院時クレアチニンキナーゼ(CK)は4800U/Lと高値だったが入院後も上昇を続け、入院翌日に最大値148000 U/Lに達した。痙攣後の横紋筋融解症や悪性症候群を鑑別にダントロレンを投与したが改善せず、ナトリウム濃度の急激な上昇による浸透圧変化が惹起した横紋筋融解症を疑った。血圧低下と心収縮力低下が遷延し、連日心エコー検査で循環血漿量を評価して輸液管理を行い尿量の確保に努めた。痙攣出現なく意識は改善したため入院4日目に抜管し、7日目に左室駆出率50%以上へ心機能改善してカテコラミン投与を中止した。腎機能は悪化することなく9日目にCK 4000 U/Lまで低下し、原病治療のため転院となった。【結論】水中毒による低ナトリウム血症では、意図しない尿量増加により急激に血中ナトリウム濃度が上昇して横紋筋融解症をきたすことがあるが、抗精神病薬を内服している患者では悪性症候群との鑑別が難しい。治療としてはダントロレン投与と腎障害の予防が重要で、心機能低下を合併した本症例では低侵襲の心エコー評価を利用して有効な循環管理をすることができた。