第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

検査法・モニタリング

[P81] 一般演題・ポスター81
検査法・モニタリング02

Sat. Mar 2, 2019 2:00 PM - 2:50 PM ポスター会場19 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:加藤 啓一(日本赤十字社医療センター麻酔科)

[P81-5] 体温管理療法におけるBispectral Index Monitorの有用性

小澤 拓郎1, 松本 晶平1, 伊藤 恵1, 大島 正行2, 富岡 義裕3 (1.太田記念病院 麻酔科, 2.小張総合病院 麻酔科, 3.羽生総合病院 救急総合診療科)

【背景】心肺停止から自己心拍再開(ROSC)後、刺激に反応がない場合に体温管理療法(TTM)の施行は推奨されている。目標体温までの到達時間、目標体温・維持時間に統一された見解はないのが現状だが、可及的早期に目標体温で管理すべき事は多くの臨床研究で報告されているが。しかし冷却時に生じるシバリング、ミオクローヌス状態の痙攣は目標体温への移行を妨げるのみならず、体温の上昇を招きかねない。防止策として、少なくとも骨格筋の熱産生を抑制するために筋弛緩薬を併用することは止むを得ないと思われる。今回、TTM終了後もその作用が遷延し、意識レベルの確認に影響した3症例に関して、鎮静深度のモニタリングとして装着したBispectral index monitor(BIS monitor)が有用であった症例を紹介する。
【臨床経過】
症例1)79歳男性、severeASで入院中、院内急変でROSC後にTTM導入。持続筋弛緩薬(Rocuronium bromide;R.B.)併用。
症例2)66歳男性(透析導入患者)、入院中の急変でROSC後にTTM開始。持続筋弛緩薬(Vecuronium bromide;VB)併用。
症例3)60歳男性、院外心停止で救急搬送されROSC、PCI施行後にTTM開始。持続RB併用。
【結論】上記3症例は復温後にも意識レベルが改善せず、低酸素脳症による意識障害と思われたが、BIS monitorのパラメータにより筋弛緩薬の遷延が疑われ、拮抗薬(sugammadex sodium)投与、または血液浄化により速やかに意識レベルが改善された。R.B.は他の筋弛緩薬と比較しても蓄積作用は少なく、特異的な拮抗薬もあることから持続投与にも適しているとされるが、一方で作用時間には個体差が大きいとも言われている。またTTM中の臓器不全、低体温、体外循環補助、長期投与などは作用遷延の因子だが、この間の代謝・排泄は不明の点も多い。集中治療において筋弛緩薬を投与された患者においては一般的な鎮静評価スケールは施行不能であり、何らかの脳波モニタリングは必須と考え、当施設ではTTM中の鎮静指標の一つとしてその簡便性からもBIS monitorを装着している。そこから得られるEEG波形、EMG出力、suppression ratio、またBIS値は患者の回復状態評価にも有用で有ると考える。今回、TTM終了後の遷延性意識障害の解析に、BIS monitor上の各パラメータ値の乖離などから、筋弛緩薬の作用遷延を見いだすことに有用であった症例を文献的考察を加え報告する。