第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

検査法・モニタリング

[P82] 一般演題・ポスター82
検査法・モニタリング03

Sat. Mar 2, 2019 2:00 PM - 2:50 PM ポスター会場20 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:山本 良平(亀田総合病院)

[P82-3] ICUにおいて薬剤師が塩酸バンコマイシン点滴静注用の初期投与設計へ介入することの有用性について

曽我 弘道, 福島 将友, 前田 朱香, 福地 祐亮, 清水 誉志, 富田 敏章, 町田 聖治, 入江 利行 (小倉記念病院 薬剤部)

【背景】塩酸バンコマイシン点滴静注用 (VCM) は治療効果の確保と副作用予防のために血中濃度の測定が必要な薬剤である。当院ICUでは、VCM投与中はICU担当の薬剤師が血中濃度を確認しながら投与設計を行う。一方、投与開始時の初期投与設計については薬剤師が介入できていない症例も存在する。【目的】本調査は、薬剤師がVCMの初期投与設計から介入した場合と血中濃度測定後から投与設計へ介入した場合で血中濃度を比較し、薬剤師による初期投与設計への介入の有用性について調査する。また、感染症症状が改善するまでのVCMの投与期間について調査し、臨床的な効果を評価する。【方法】2015年8月から2017年1月までにICUでVCMが開始となった56症例のうち、術前投与、開始48時間以内に投与終了、血液透析施行の計21症例を除いた35症例を対象として後方視的に調査した。VCMの初回投与設計から介入できた症例を介入群、介入できなかった症例を非介入群とし、初回血中濃度測定後は両群とも薬剤師が投与設計した。調査項目は、初回および2回目以降の血中濃度トラフ値と有効血中濃度の割合、VCM開始時と開始48時間後のeGFR、感染症症状の改善によりVCM投与終了となった症例での初回血中濃度トラフ値および投与期間とした。血中濃度と投与期間は中央値[IQR]で記した。【結果】初回血中濃度トラフ値(μg/mL)は、介入群(15例)で14.3[13.6-16.1]、非介入群(20例)で10.1[8.2-15.9]であり、有効血中濃度の割合は介入群で有意に高かった(80% vs 30%,p<0.01)。また、非介入群の初回血中濃度トラフ値のうち半数が10μg/mL未満であった。2回目以降の血中濃度トラフ値は、介入群で16.7[12.5-18.4]、非介入群で17.7 [14.7-20.9]であり、有効血中濃度の割合に有意差を認めなかった(71.4% vs 66.7%,p=0.68)。VCM開始時のeGFR(mL/min/1.73m2)は、介入群で35.6±13.1、非介入群で38.5±27.4であった。VCM開始48時間後のeGFRは介入群で38.3±16.5、非介入群で46.0±32.6であった。感染症症状の改善によりVCM投与終了となった症例では、初回血中濃度トラフ値は介入群(11例)で14.7[13.7-17.1]、非介入群(7例)で8.5[5.9-12.2]であり、投与期間は8[6-14]日、12[10-20]日であった。【結論】薬剤師がVCMの初期投与設計から介入することで、VCMの血中濃度が速やかに治療域内へ到達可能となり、さらにはVCMの投与期間の短縮に寄与する可能性がある。