第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

検査法・モニタリング

[P82] 一般演題・ポスター82
検査法・モニタリング03

Sat. Mar 2, 2019 2:00 PM - 2:50 PM ポスター会場20 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:山本 良平(亀田総合病院)

[P82-4] 精神疾患を合併した頸髄損傷患者の人工呼吸器離脱には呼吸機能評価が有用である(症例報告)

中川 義嗣1, 長谷川 隆一2, 辰村 正紀3, 佐川 礼子1, 丸岡 正則4, 照沼 祥子5, 小峰 翔太1, 土子 沙也香1 (1.水戸協同病院 リハビリテーション部, 2.獨協医科大学埼玉医療センター 集中治療科, 3.水戸協同病院 整形外科, 4.水戸協同病院 臨床工学部, 5.水戸協同病院 看護部)

【背景】頚髄損傷(以下頚損)では,呼吸筋力の低下により一過性に換気補助を要しても,適切な理学療法により呼吸器離脱が可能である場合も多い.しかし,精神疾患や睡眠時無呼吸(以下SAS)などを合併する場合は,患者とのコミュニケーション不良や呼吸状態の把握困難さから,人工呼吸器離脱に難渋することが予想される.今回我々は,うつ病とSASを合併した頚損患者において,呼吸機能検査による客観的な指標を用いて長期人工呼吸から離脱を図れたので報告する.【症例】66歳女性.交通事故による外傷性頚損(C5前方脱臼)に対し,他院にて頚椎後方固定術を施行され,受傷7日目に当院転院.受傷18日目に頚損に続発する徐脈から心静止を来し,気管挿管,人工呼吸器管理及びペースメーカー植込となった.挿管5日後に抜管しNPPV管理となったが,受傷31日目に喀痰による窒息のため心肺停止(CPA)に至り再挿管・低体温療法が施行された.その後,明らかな後遺症なく覚醒したが,呼吸管理の長期化に備え受傷46日目に気管切開(以下気切)術を行った.気切2日後よりon/off trialを開始したが,呼吸困難感により精神的不安も増大し,連続8時間以上の延長は困難であった.そこで受傷74日目より訓練効果と人工呼吸器離脱のタイミングを客観的に判断するため,ハンドヘルド呼吸モニタMeteor(TreyMed社製)を用い換気量や最大呼気流速を定期評価した.その結果,受傷74日目と88日目では,換気量15.1から23.6L/min,最大呼気流速48.1から54.2L/minといずれも増加を認め,咳漱方法の学習と呼吸筋力の向上が得られたものと判断しoff trialを再開,受傷112日目に終日offとすることができた.【考察】うつ病の悪化により,本人からフィードバックを得るこが困難であり,加えて2型呼吸不全や窒息により2度の挿管管理を要し,気切後の呼吸筋の廃用や精神的不安の増大といった複雑な病態も人工呼吸器離脱の評価を難しくした.ハンドヘルド呼吸モニタは本来非挿管患者の呼吸機能評価に用いるものであるが,気切下の呼吸機能の評価にも有用であることが示唆された.本モニタにより呼吸機能評価を行うことで改善の程度を可視化し,人工呼吸器離脱の時期を判定できると考えられた.【結語】精神疾患を有する高位頸髄損傷患者の人工呼吸器離脱には客観的な呼吸機能評価が有用である.