[PD1-2] 事故調査を行う立場から
1.外部調査委員の選任
医療機関が行う医療事故調査(以下は院内調査)には、公正性と透明性を担保するために原則として外部調査委員が参加する。外部調査委員は、医療事故調査支援団体(都道府県医師会等)から当該領域の専門家として選任される。中立性の観点から当該医療機関や当事者に対して利益相反のない立場であることが条件となっている。
2.院内調査の手順
院内調査は日本医療安全調査機構が推奨する項目に沿って行う。診療録などの記録の確認、当事者およびその他の関係者からのヒアリング、医薬品、医療機器、設備等の確認など、客観的な事実確認を行って原因を明らかにし、再発防止策を検討する。調査開始時および調査報告書の冒頭で「この医療事故調査制度の目的は、医療安全の確保であり、個人の責任を追及するためのものではない。」と明言している 。そのため、当事者のエラーが主因と思われた場合でも、システムエラーの解明を主体とした調査および報告書作成を心がける。実際に事故のあった医療現場を詳細に調査することで、改善すべき環境(人員配置、医療機器、医薬品など)のために当事者がエラーに至ったと指摘することも可能となる。安全を確保するためには個人の技術習得や学習などの医療水準を高めてエラーを防ぐことも大切であるが、エラーを防ぐための機材や人員の配置などのシステム改善の方がより確実な効果が期待できる。
3.当事者に対する評価について
しかし実際には当事者の医療行為について厳しい評価が報告書に記載されることがある。当該医療の専門家である外部調査員は高い水準の医療を追求し、教育指導も行っていることが多い。院内調査が「学習目的の調査」であれば、報告書に事故事例の医療行為の改善点を正確に記載する必要がある。このような評価は医療関係者間では医療レベル向上のために常に行われていることである。調査内容の秘匿性が確実であれば問題が生じないが、医療環境を詳しく知らない遺族らが見ることになれば医療行為の過失を示していると思うかもしれない。
4.基準としている医療水準自体が不確かである
医療行為の評価の基準としている医療水準は法律や機械操作のように確固たるものではない。医療水準は常に流動的であり、正しいと思われていた治療法が突然否定されることもある。医薬品や医療手技の違いによる差は統計学的有意差によるエビデンスで優劣を定めているが、その差は僅かなことが多い。医療行為がもたらす結果には不確定部分が常に伴う。刑事民事訴訟の場面で、司法の専門家が医師の医学的評価を引用する時には以上のような不確かさを盛り込む配慮が必要だと思う。
医療機関が行う医療事故調査(以下は院内調査)には、公正性と透明性を担保するために原則として外部調査委員が参加する。外部調査委員は、医療事故調査支援団体(都道府県医師会等)から当該領域の専門家として選任される。中立性の観点から当該医療機関や当事者に対して利益相反のない立場であることが条件となっている。
2.院内調査の手順
院内調査は日本医療安全調査機構が推奨する項目に沿って行う。診療録などの記録の確認、当事者およびその他の関係者からのヒアリング、医薬品、医療機器、設備等の確認など、客観的な事実確認を行って原因を明らかにし、再発防止策を検討する。調査開始時および調査報告書の冒頭で「この医療事故調査制度の目的は、医療安全の確保であり、個人の責任を追及するためのものではない。」と明言している 。そのため、当事者のエラーが主因と思われた場合でも、システムエラーの解明を主体とした調査および報告書作成を心がける。実際に事故のあった医療現場を詳細に調査することで、改善すべき環境(人員配置、医療機器、医薬品など)のために当事者がエラーに至ったと指摘することも可能となる。安全を確保するためには個人の技術習得や学習などの医療水準を高めてエラーを防ぐことも大切であるが、エラーを防ぐための機材や人員の配置などのシステム改善の方がより確実な効果が期待できる。
3.当事者に対する評価について
しかし実際には当事者の医療行為について厳しい評価が報告書に記載されることがある。当該医療の専門家である外部調査員は高い水準の医療を追求し、教育指導も行っていることが多い。院内調査が「学習目的の調査」であれば、報告書に事故事例の医療行為の改善点を正確に記載する必要がある。このような評価は医療関係者間では医療レベル向上のために常に行われていることである。調査内容の秘匿性が確実であれば問題が生じないが、医療環境を詳しく知らない遺族らが見ることになれば医療行為の過失を示していると思うかもしれない。
4.基準としている医療水準自体が不確かである
医療行為の評価の基準としている医療水準は法律や機械操作のように確固たるものではない。医療水準は常に流動的であり、正しいと思われていた治療法が突然否定されることもある。医薬品や医療手技の違いによる差は統計学的有意差によるエビデンスで優劣を定めているが、その差は僅かなことが多い。医療行為がもたらす結果には不確定部分が常に伴う。刑事民事訴訟の場面で、司法の専門家が医師の医学的評価を引用する時には以上のような不確かさを盛り込む配慮が必要だと思う。