[PD13-2] 2020東京オリンピック・パラリンピックでの多数傷病者発生事故時の集中治療室の対応
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【背景】日本集中治療医学会では2020東京オリンピック・パラリンピックへの準備のため多数傷病者事故(Mass casualty incident (MCI))発生時の集中治療室(intensive care unit: ICU)の準備に関し、危機管理委員会でICUの災害時のあるべき姿を、MCI発生時のICU運用体制検討ワーキンググループ(通称オリパラ準備WG)では具体的な方法論の議論を重ねてきた。【集中治療室でのMCI対応の特徴】集中治療室の受け入れは、病院前でトリアージを行い病院に搬送され、手術等の処置が終了した(処置が必要なければそのままの)症例が集中治療のために入室してくることが特徴である。限られたICU資源を確保するために以下の方法が提言されている:①入室基準を通常とは違う形で定める②既に入室している症例の一般病棟への退出基準を定める③ICUの拡張を決めておく④一般病棟で安定している症例を退院させる(リバーストリアージ)⑤一定安定した症例を域内、域外搬送する。この様な方法を発災後ではなく準備の段階であらかじめ院内マニュアル等に定めておく必要がある。ICUを臨時に拡張する仕組みを策定するなら、その後の搬送先をどの様に確保していくか事前に策定することが望まれる。そのためには地域内統合システムとして、自治体等が設立する他機関連携システム(Multi-Agency Coordination System)や、地域間のICU間の連携システムを考えていくことが必要である。【災害の種類による役割の違い】MCI発生時にはその内容によりICUでの対応が異なることが予測される。外傷は止血が優先されるためその処置が終了後にICUに入室することとなる。熱傷では先ずはICUに入室させて状態を安定化させた後に全国の熱傷ユニットへの分散搬送することが想定されている。中毒では毒物除染後に入室すること、解毒剤が存在する場合はその確保をどうするか等が問題となってくる。熱中症は多数傷病者となるがその来院のタイミングはその他の傷病とは異なり、少人数ずつ継続的に来院してくる特徴があると考えられた。それぞれの災害の特徴を理解した上で集中治療室としてどの様な準備が必要かを議論することが必要である。【結語】集中治療医学会では2020東京オリンピック・パラリンピック時のMCIのICU対応の準備を進めている。これらの議論を通し、今後の日本のICUでのMCI対応をどう行うか確立していくことが重要である。