[SY22-6] 重症心不全に対する補助循環デバイスに関連する安全管理への取り組み
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【はじめに】重症心不全に対する補助循環は,急性腎傷害,急性肝不全,播種性血管内凝固症候群などの合併を背景として,出血,塞栓症および感染症など合併症を生じやすい。補助循環における合併症管理についての見解を共有する必要がある。【概要】当院では重症心不全に対して2013年度から植え込み型左室補助人工心臓(LVAD)による治療を開始し,以後,末期心筋症や劇症型心筋炎を原因とする重症心不全および心原性ショックの管理が増加した。当救急・内科系集中治療部(EMICU)では,V-A ECMOやIABPなどの補助循環デバイスを要する管理を担当し,デバイス使用期間が長期化する症例を経験するようになった。一方,このようなデバイス管理では抗凝固薬などの薬剤や補助機器の評価項目が増加するため,共同する医師,看護師,薬剤師,および臨床工学技士などの多職種が連携する危機対策が重要となった。本シンポジウムでは,心原性ショックに対する補助循環デバイスの管理状況を紹介し,他職種連携として出血,塞栓症および感染などの合併症に対する解決すべき課題を整理する。【データ紹介】EMICUは,2013年4月から2017年12月までに70例の成人の心原性ショック症例を管理した。補助循環デバイスを必要とした成人症例は,65例(92.9%)であり,年齢53.8歳,APACHE IIスコア平均27.5,来院時心停止24例(36.9%),MOF 17例(26.2%),AKI 36例(55.4%),primary PCI 21例(32.3%)だった。IABPは全例に使用され,V-A ECMOは33例(50.8%),持続的腎代替療法(CRRT)は急性腎傷害を合併した26例(40%)だった。EMICUの平均滞在日数は18.6日,30日死亡は13例(20%)であり,補助循環デバイス使用中の合併症は,脳卒中 6例(9.2%),止血処置を要する大量出血 9例(13.8%),小出血 17例(26.2%),敗血症 17例(26.2%)であった。一方,小児の循環補助デバイス症例は,同期間でV-A ECMO 3例とV-V ECMO 1例であり,同等の管理の危険性を認めた。【結語】重症心不全に対するV-A ECMOやIABPなどの補助循環デバイスの安全管理として,凝固線溶系管理,感染管理,および補助循環の安全管理を紹介し,患者の予後への影響を討議したい。