[SY6-3] 本邦におけるたんぱく質投与の実際と問題点
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日本版重症患者の栄養療法ガイドラインでは,たんぱく質投与量と予後に関する研究が十分ではないため,至適たんぱく投与量は不明であるとしている。一方,最新のヨーロッパ静脈経腸栄養学会 (ESPEN) のガイドラインでは,ランダム化比較試験では十分なエビデンスはないものの観察研究の結果などから,1.3g/kg/dayの投与を推奨している。また,ESPENのガイドラインでは,投与タイミングが予後に影響を与える可能性について解説の中で言及している。それでは,本邦におけるたんぱく質投与量の現状はどうであろうか?2013-2014年に実施された国際栄養調査における日本を含むアジア地域の結果が最近,報告された (JPEN J Parenter Enteral Nutr. in press) 。このアジア地域の結果の半数以上は本邦のICUからのデータであるが,たんぱく質投与量は0.6 g/kg/dayで,目標値の55%であった。本邦におけるたんぱく質投与の現状を明らかにするために2015-2016年に実施した多施設観察研究では,たんぱく質の目標値は1.1g/kg/dayであったが,実際に投与された量は入室7日目で0.4g/kg/dayであり,目標の36%であった。この2つの結果から,本邦のたんぱく質投与量の目標はガイドラインに基づいた設定になっているが,実際の投与量は0.6-1.1 g/kg/dayであるといえる。たんぱく質投与量については,研究が十分ではなく,投与量,タイミングを含めて今後の研究が望まれる。