第96回日本医療機器学会大会

講演情報

一般演題

人工呼吸/透析

人工呼吸/透析

座長:久保 仁(東京大学)

[81] 体導音センサを用いた自己血管内シャント機能診断法の開発

城屋敷 健志1, 和田 親宗2 (1.済生会八幡総合病院 臨床工学科, 2.九州工業大学大学院生命体工学研究科)

【目的】
自己血管内シャント機能における定量的評価として超音波診断装置を用いた手法があり,血管形態や血管抵抗指数,上腕動脈血流量の計測によって機能診断が可能である.一方で,聴診によって自己血管内シャント機能診断を試みる研究がおこなわれている.本研究では生体との音響整合によって生体内音を広帯域に検出可能な体導音センサを用い,シャント音からの自己血管内シャント機能診断が可能か明らかにすることを目的とした.さらに従来の生体音研究で用いられてきたマイクロホンや加速度センサとの比較をおこない,体導音センサの有用性について検証をおこなった.
【方法】
シャント音観測システムを開発し,透析患者36名による正常および狭窄シャント音の検出感度比較をおこなった.また,透析患者27名の血管抵抗指数と上腕動脈血流量の値を種々の機械学習を用い識別した.識別区間は血管抵抗指数では0.60,0.65,0.70,上腕動脈血流量では350ml/min,400ml/min,500ml/minとし,陽性と陰性を分け,評価した.
【結果】
体導音センサは広帯域に正常シャント音の検出が可能であった.また,1kHz以上の狭窄シャント音信号の検出感度は体導音センサが92%で他のセンサより高かった.機械学習による識別の正解率は,体導音センサを用いた場合,血管抵抗指数で81%から96%,上腕動脈血流量で69%から95%であり,血管抵抗指数のすべての区間と上腕動脈血流量の350ml/minと400ml/minの区間で体導音センサが高かった.
【考察】
体導音センサは特に1kHz以上のシャント音検出に有用であり,このことは機械学習の結果にも影響を与えていたが,上腕動脈血流量の識別区間の値が高くなると識別能力が低下し,これは超音波計測の誤差や低域の周波数特性の影響が考えられた.
【結論】
体導音センサは1kHz以上のシャント音の検出と機械学習による血管抵抗指数の識別能力が高く,これらを利用した自己血管内シャント機能診断に適していると考えられる.