第98回日本医療機器学会大会

講演情報

一般演題

臨床工学

臨床工学

2023年7月1日(土) 15:00 〜 16:10 第4会場 (アネックスホール F204)

座長:野川 悟史(昭和大学藤が丘病院)

15:40 〜 15:50

[111] 腹水濾過濃縮専用装置の使用報告

鈴木 祥仁1,2, 北川 夏実1, 福岡 慧也1, 守屋 賢志1, 袴田 貴大1, 佐藤 元美3 (1.新城市民病院 医療技術部 臨床工学課, 2.新城市民病院 産学官連携推進室, 3.新城市民病院 腎臓内科・人工透析センター)

【目的】
当院でも,難治性腹水症例に対して腹水濾過濃縮再静注法(以下CART)を実施している.従来,専用装置を使用することを推奨されるが,その処理方法は様々であり,安全性については,不明である.最近では,CART専用装置も販売されている.今回,カネカメディックス社製,腹水濾過濃縮用装置e-CARTを使用する機会を得たため報告する.
【方法】
対象患者は,88歳男性,原疾患は肝細胞癌の患者に対して計5回実施した.腹水濾過器,腹水濃縮器にマスキュアフィルターを使用し,胸水処理は,外圧濾過方式にて,腹水濾過濃縮用装置「e-CART」を使用し実施した.CART前後の患者の体温変化,TP・Alb回収率,細胞数などを測定した.
【結果】
平均原胸水量は4.8L,平均回収量は0.31Lであった.平均回収率はTP72.1%,Alb62.9%であった.濾過処理後細胞数は平均3.4/μLであった.再静注による体温変化は±1.0℃以内であった.
【考察】
今回,当院では初めてCART専用装置を使用した.今までは,KM-CART,血液浄化装置などを使用し実施していたが,e-CARTはコンパクトな本体と3ヶ所の圧力を監視することによって腹水濾過器,濃縮器の状態をモニタリングすることが可能である.また,ローラーポンプは,逆回転も可能なため,濾過器の膜洗浄を実施することが可能であり,回路のクリップの使用方法によって汎用性が高いと思われる.症例数が少ないため,回収率の優劣は不明であるが安全にCARTが施行できると考える.今後も引き続き,製品の特長などを理解し手技・患者の状態・腹水の性状などにより有効性を検討したい.