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[51] 荷重計測を用いた鋼製小物の使用感の可視化
~第2報:組織切断時の荷重変化の比較~
主に手術室で用いられる鋼製小物は典型的な多品種少量生産であり,他製造業と比較して自動化は進まず,熟練技術者による手作業での製造が残っている.しかしながら団塊世代の大量退職や若者のものづくり離れなどの理由で,後継者は年々減少しており,技能技術伝承が急務である.このような背景から我々は,熟練技術者の暗黙知を形式知に変換し,高品質な鋼製小物のものづくりを支援すべく,製品特性の可視化に取り組んでいる.切除・把持等の基本性能は当然具備するが,それに加えて「なめらかさ」「デリケート」「タメ」といった使用感が鋼製小物の付加価値であると考えた.これら感性評価は鋼製小物の操作力変化に関連すると仮定している.これまでに我々は鋼製小物に荷重をかけて開閉動作をおこなう際の荷重-変位曲線を求め,2022年の本大会にて報告した.剥離鉗子や円のみ鉗子などにおいて,異なる製造者の製品同士を比較し,ラチェットを乗り越える際の荷重変動波形や閉じる時と開く時の荷重のヒステリシスについて顕著な差を見出した.ただし,この実験では先端が無負荷(組織の切除・把持なし)であったため,今回新たに密度の異なる模擬海綿骨シート(厚さ3mm,密度 40pcfおよび20pcf)を用い,ほぼ同一仕様の2社のケリソンパンチを用いた組織切断時の荷重変化を比較し,組織の密度による荷重-変位曲線の変動を確認した.密度による差が顕著である製品ほど,切除・把持する組織の性状を力覚フィードバックから得られやすくなり,肯定的な使用感に繋がると考えられる.