第98回日本医療機器学会大会

講演情報

一般演題

手術室

手術室1

2023年6月30日(金) 16:00 〜 16:50 第4会場 (アネックスホール F204)

座長:野田 剛広(大阪大学)

16:40 〜 16:50

[53] 脊椎手術における完全自己血由来フィブリン糊の使用成績

谷口 優樹1,2, 松林 嘉孝2, 加藤 壯2, 大島 寧2, 田中 栄2, 池田 敏之3, 岡崎 仁3, 深柄 和彦1 (1.東京大学医学部附属病院 手術部, 2.東京大学医学部附属病院 整形外科・脊椎外科, 3.東京大学医学部附属病院 輸血部)

【目的】
同種フィブリン糊(FG)にはウイルス感染やアレルギーなどのリスクが内在する.またFGの骨癒合への影響においても不明な点が多い.近年, 完全自己血由来FG(CAFG:completely autologous FG)を精製可能なシステムが販売されているが脊椎手術での使用報告はこれまでにない.本報告の目的は脊椎手術におけるCAFGの使用成績を報告することである.
【方法】
2020年10月までに当院で脊椎手術をおこない,術前自己血からクリオシールシステム®(旭化成メディカル)にてCAFGを精製した症例を対象とした.CAFGの使用用途を調査し,術後90日以内の創部に関連した再手術を主要アウトカムとした.CAFGの安全性評価として,25歳以下の脊柱変形症例に着目し,CAFG導入直前までの連続同数症例と比較検討した.また骨癒合への影響の評価としては同期間内の特発性側弯症(IS)症例を抽出し,術後1年時点でのレントゲン上でのimplant failure(IF)を評価し, CAFG導入前までの連続同数症例との比較をおこなった.
【結果】
期間内でのCAFGを使用した脊椎手術症例は 131例であった.使用用途は固定術における移植骨の骨母床への圧着固定による止血目的:110例,硬膜切開部・損傷部へのシーリング目的:17例,その他が4例であった.90日以内の創部に関連した再手術は4例(創部感染: SSI 3例,硬膜外血腫1例)にみられた.シーリング目的に使用した17例において髄液漏による再手術を要した症例はいなかった.25歳以下の脊柱変形症例は76例であり,対照群との比較では90日以内の創部関連の再手術発生率で有意な差はなかった(CAFG群:SSI 2例,対照群:SSI 4例).同期間内のCAFG群のIS症例は36例であり,対照群と比較して術後1年でのIFにも有意差はなかった.
【結論】
脊椎手術においてCAFGの使用は創部に関連した合併症発生とは明らかな関連はなく,また骨癒合への影響も明らかではなかった.