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[81] 医療安全研修による滅菌供給業務従事者のインシデントに対する意識と対応の変化
滅菌供給業務従事者には,安全かつ適切な再使用可能医療機器を供給するために,医療安全および感染制御の知識と実践が求められているが,これらの知識を習得する機会はほとんどない.我々は滅菌供給部門における医療安全に着目し,業務従事者が滅菌供給業務と医療安全の関係を理解し,インシデントなどの発生時,適切に報告し対策につなげられるようになることを目的に医療安全研修の開催,インシデントレポート(以下レポート)のWEBフォーム化をおこなった.この取り組みにより報告件数は増加したが,当事者からではなく責任者など特定の者のみが当事者に替わって報告している状況が確認された.そこで,当事者からの報告を促し,対策を円滑に立案するため,レポートに関する研修を実施し,レポート提出への意識と当事者報告率の変化を調査した.調査対象者は医系診療部門または歯系診療部門で滅菌供給業務に従事する委託職員45名とした.当事者報告が少ない理由と研修による意識の変化を確認するため,研修前後でアンケート調査をおこなった.研修はレポートの意義と目的,WEBフォーム入力方法を解説した動画を用いた個別学習と,模擬事例を用いたレポート入力実習とした.研修後のアンケートには,業務手順の有無,手順順守の実状,研修会の評価,今後研修で取り上げてほしい事項を問う内容を追加した.調査の結果,レポートの理解度に顕著な変化はなかったが,当事者としてのレポート提出に対する意識は,「積極的に提出したい」,「遭遇したら提出したい」,「指示されれば提出したい」を合わせた割合が38%から61%へ増加した.一方,「できれば提出したくない」は27%から5%に減少した.また,当事者報告率は44.5%から76.0%へ増加した.インシデントに対する意識や行動が前向きに変化しており,研修の効果が示されるとともに,研修には病院側の介入が必要であることが示唆された.