第98回日本医療機器学会大会

講演情報

一般演題

滅菌

滅菌2

2023年7月1日(土) 11:00 〜 11:50 第3会場 (アネックスホール F205+F206)

座長:橋本 素乃(東京医科歯科大学)

11:30 〜 11:40

[T77] 医療現場におけるリスクを低減した過酢酸製剤の開発

吉川 啓明, 坂井 聡美, クワン グレンレリン, 米田 友則, 川向 恵美子, 平田 善彦 (サラヤ㈱バイオケミカル研究所)

【背景】
過酢酸は高い殺菌力や残留毒性の低さといった特徴から食品工場におけるCIP洗浄やペットボトルの殺菌,さらには生鮮食品に対しても使用される.また,医療分野においてはアルデヒド系の消毒剤と並んで高水準消毒剤として使用される.過酢酸は強力な酸化作用によって殺菌効果を示す一方で,一部の被消毒物に対して腐食や劣化を引き起こすことが知られている.医療分野において,器具の故障は医療事故に繋がる可能性があるため,過酢酸製剤を使用する際には,対象となる器具が過酢酸の使用に適しているか確認することが重要である.また,一般的に過酢酸製剤は原液を希釈した実用液を消毒に用いることが多いが,その実用液に持ち込まれる成分によって,使用可能としている材質に対しても腐食や劣化が生じることがある.さらに,それらによって過酢酸の分解が進行し,十分な消毒効果が得られなくなるリスクもある.そこで,器具の劣化や消毒不良といったリスクを低減できる過酢酸製剤の開発をおこなった.
【方法】
過酢酸に人工硬水を加え,成分A(硝酸塩),成分B(カルボン酸)を添加し,0.3%過酢酸希釈溶液を調製した.ステンレステストピース(SUS420J2)を過酢酸希釈溶液に室温で7日間浸漬した後,外観変化と重量減少率から腐食の程度を評価した.
【結果】
成分A,Bを添加しなかった場合,テストピースに茶色の錆および孔食が発生し,重量についても0.7 ~ 1.3%減少した.それに対して成分A,Bを添加した場合は,外観変化は発生せず,重量変化も0.01%に抑えられた.
【まとめ】
適切な成分を添加することで,器具の劣化や消毒不良といった過酢酸製剤におけるリスクを低減することが可能である.また,添加する成分を選定することで使用目的に応じた性能を付加することができる.