第42回日本磁気共鳴医学会大会

特別講演



超伝導について  ートポロジカル量子現象から高温超伝導磁石までー

 
 資源調達を輸入に依存している日本は、海外における液体ヘリウムの産出量に大きな影響を受けています。昨年は輸入量の激減によって国内の液体ヘリウム供給に支障を来たし、今年に入ってなお液体ヘリウムの価格高騰が続いています。液体ヘリウムを利用した超伝導磁石はMRIに欠くことができないものであり、これを機に高温超伝導を含めた超電導技術に注目が集まっています。今大会の特別講演では超伝導について再考すべく、二名の先生にご講演いただきます。

① 高温超伝導体の中にスピン三重項状態の超伝導体があることを発見され、 2010年に仁科記念賞を受賞された京都大学の前野悦輝先生(大学院理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻)をお招きします。前野先生は一部の高温超伝導体がスピン三重項状態の超伝導体があることを発見されました。さらに量子力学にトポロジーを導入してトポロジカル量子現象という領域を開拓され、現在は新学術領域のリーダーとして牽引役を担われています。また、持ち前の新しい発想力で円柱状の周期表を用いたエレメンタッチをも発案され、京都大学のオリジナルグッズとして採用されています。前野先生には超伝導の発見当時のエピソードから、高温超伝導体の発見、さらに超伝導研究の最先端までを平易に説明していただく予定となっております。

② 1980年代に発見された高温超伝導体は、1980年代後半に多くの物質が高温超伝導の温度の記録を塗り替えました。高温超伝導磁石は従来の超伝導材料と異なり、液体ヘリウムで冷却せずに超伝導を実現できます。直近では、JR東日本から敷設が発表されたリニアモーターカーへの利用が期待されるところです。そこで国内で高温超伝導磁石を利用したMRIの開発を行っている神戸製鋼所の斉藤一功先生(電子技術研究所・超電導研究室)をお招きし、高温超伝導磁石の開発の問題点や今後の展望についてお話しいただく予定となっております。