第42回日本磁気共鳴医学会大会

講演情報

教育講演

脳神経

教育講演12

脳神経3

2014年9月20日(土) 08:30 〜 09:30 第2会場 (3F 源氏の間東)

座長:大場洋(帝京大学医学部 放射線科学教室)

[EL12-2] 最新の脳画像統計解析

阿部修, 雫石崇, 菊田潤子, 山田晴耕 (日本大学医学部 放射線医学系画像診断学分野)

診療画像診断においては病変局在/形態/濃淡、投与造影剤の経時的分布から予測される血流情報などに、病歴/臨床検査所見を加味した上で的確な診断を下せる場合は多い。脳梗塞/腫瘍など明確なコントラスト差を生じる病変では視覚的診断は迅速かつ的確であるが、MRIには視覚的評価のみでは解析不能だが有用な情報が膨大に含まれている。例えば中枢神経系の生理的発達や加齢では全脳均等に変化するのではなく年齢に応じた部位依存性がある程度の幅を持って認められる。また神経変性疾患や精神神経疾患では疾患特異的な解剖学的局在における形態/機能変化が生じうるものの、生理的変化を考慮した上で病的変化かどうかを各脳回/白質線維/神経核単位で視覚的に判断することは不可能である。その評価方法として近年目を見張る発展を遂げている分野が脳画像統計解析である。その解析法の対象となるパラメータは1)全脳/局所容積および皮質厚、2)灌流/拡散あるいはT1/T2値画像などのパラメトリック情報、3)fMRIにおけるBOLD信号の3種に大別される。1)の容積評価法はVBMと呼ばれ、SPMが代表的解析ツールで、最近では空間的正規化がより高精度となったDARTELまたはVBM8がプラグインとして利用可能である。また皮質厚/脳表面積/脳回皺裂の各情報を分離できないVBM法に対して、それらを個別に評価可能なSBM法ではFreeSurferが汎用される。2)では従来SPMによる一般線型モデルを用いた統計解析が用いられてきたが、近年では少なくとも拡散情報についてはFSL-TBSSによる白質骨格解析/ノンパラメトリック検定が主流となりつつある。3)では特定のタスクによって賦活部位を観測するfMRIばかりでなく、安静時にBOLD信号変化が同期する脳内ネットワークを明らかにするresting-state fMRIの研究も精力的に行われており、特定の領域との相関を解析するseed-baseなアプローチから始まって、data-drivenな全脳ICA、グラフ理論などの適応により洗練された解析手法が広がってきた。本講演では各種脳画像情報の解析方法を俯瞰し、解析時の注意点や代表的解析ツールの利点/欠点を挙げ、明日からの脳画像解析に直ちに役立つような情報を提供することを目標とする。