[O-1-034] Extended ISIS法を用いた31P-MRSによる骨格筋リン酸化合物の定量方法の検討
【背景】31P-MRSを用いた我々のこれまでの研究において、ヒト骨格筋における筋線維組成とPCr/ATPとの間に有意な相関があることを報告した。しかしながら、一般的な31P-MRSではリン酸化合物の濃度を定量できないため、どちらの化合物の違いが影響しているのかは明確ではない。【目的】本研究では、Extended ISIS(E-ISIS)法を用いたシングルボクセル31P-MRSによる非侵襲的なリン酸化合物濃度の定量方法を確立させ、その妥当性を検証することを目的とした。【方法】31P-MRS測定には3Tの超電導MR装置(Magnetom Verio、Siemens社製)を用いた。シングルボクセル31P-MRSはBognerら(NMR Biomed. 2011)の方法を用いた。スライス選択パルスはGOIA-W(16,4)、励起にはAdiabatic half-passageパルスを用い、関心領域体積は常に42cm3以上になるように設定した。TRは6s、積算は36回とした。最初に、異なるKH2PO4濃度の基準溶液を作製して濃度と31P-MRSピーク面積との関係を調べた。その後、確立させた測定条件を用いて、健常成人男性9名の外側広筋を対象としてリン酸化合物濃度の測定を行った。TR6sとTR30sのピーク面積を比較することにより、各化合物の緩和補正係数を算出した。【結果】基準溶液を用いた測定では、KH2PO4濃度と31P-MRSピーク面積との間に、有意な高い相関関係が認められた(r2=0.9996, P<0.001)。31P-MRSを用いて測定された外側広筋のPCr、ATP、Pi濃度はそれぞれ36.5±2.6、8.1±0.9、3.4±0.7 mMであり、先行研究と同様な値を得られることが示された。【結論】E-ISIS法を用いたシングルボクセル31P-MRSにより、3.8分の時間分解能で、骨格筋のリン酸化合物濃度を測定することが可能であることが示され、筋特性評価や筋コンディショニング等において今後の幅広い応用が期待できる。