第42回日本磁気共鳴医学会大会

講演情報

一般演題

骨格筋-MRS

骨格筋-MRS

2014年9月18日(木) 16:10 〜 16:40 第2会場 (3F 源氏の間東)

座長:犬伏俊郎(滋賀医科大学 分子神経科学研究センター)

[O-1-035] C-13標識を用いたHMQC法によるがんのワールブルグ効果解析

犬伏俊郎1,4, 加藤智子1, 藤本栄1,2, 王欣1,3, 椎野顯彦1, 森川茂廣1 (1.滋賀医科大学 分子神経科学研究センター, 2.群馬県立がんセンター, 3.中国医科大学, 4.立命館大学 スポーツ健康学科)

【目的】近年、プロテオミクスやメタボロームなどシステムレベルでの解析から、バイオマーカー分子の探索が始まるなか、最近のがん研究は遺伝子変異の解析から代謝メカニズムの解明へと変遷しつつある。本研究では13C標識グルコースを用い、モデル動物における腫瘍組織の糖代謝(ワールブルグ効果)をMRスペクトルにより計測し、MRの形態画像やがんマーカーとしての抗体などの集積部位と比較しながら、がんの病理を総合的に解析するとともに、これらの情報をがんの治療効果判定や診断技術に応用することを目指した。【方法】NMRスペクトルは13C核に直結した検出感度の高いHのMR信号を利用する、多量子コヒーレンスMRスペクトロスコピー(HMQC)法を用い、生体織内での13C標識グルコースの代謝によって生成した13C標識化合物を追跡し、薬剤の効果をPK-PDで解析した。【結果】がんの糖代謝過程においてグルコースから始まり乳酸に至る生成産物の経時的な変化を計測し、がんの代謝機能評価を行った。酸化的リン酸化と好気的解糖のピボットとなるピルビン酸を生成する酵素PKM2を阻害するとグルコースの取り込みとともに乳酸の生成が抑制された。また、乳酸産生はその細胞外への排出機能やプロトン調節機構にも連動するとともに、乳酸産生プロファイルはがんのステージにも関連することが示唆された。【結論】最近、盛んにがんの代謝研究に利用されている超偏極(DNP)による13C MR信号増強法に比べてHMQC法は信号検出感度が著しく劣るものの、信号の増強はTに左右されることなく、しかも、グルコースの取り込みからはじまり最終産物の乳酸にいたる腫瘍代謝の全過程が追跡できる点に特色がある。一方、診断に用いられるFDG PETはこの代謝過程の入り口のみ、また、13C超偏極はその最終過程であるピルビン酸から乳酸への変換しか観察できない。さらに、乳酸の蓄積が腫瘍の増殖や浸潤・転移に深く関わることから、乳酸を標的に腫瘍代謝への薬剤の効果が解析できる本手法は、がんの診断のみならず治療介入への新たな機会をもたらす可能性が示唆された。