[O-1-048] MR Elastography時の不快度軽減の為のパッシブドライバー設置部位及び振動の強さによる肝弾性率の比較検討
【背景・目的】MR Elastography(MRE)は、コイルと被験者の間に振動を人体に伝播させる為のパッシブドライバーを設置して検査を行う必要があり、これまで肝臓付近に設置し振動の強さ(Amplitude:以降AT)を装置性能の50%に設定していたが、固定時に肋骨や術創部に触れ疼痛や不快感を訴えられるケースがあった。そこで今回、診断能に影響することなくこれらの負担を軽減する為の最適なパッシブドライバーの設置部位とAT強度の設定を目的とし、それぞれを変化させた場合のMRE弾性率および不快度を比較検討した。【方法】健常ボランティア12名と同意を得た慢性肝疾患20例を対象とし、肝弾性率の測定にはGE Healthcare社製 SignaHDxt 1.5T(Ver.23)およびMREアプリケーションMR Touchを用いた。ROI設定スライス位置は門脈右分枝が描出される断面とした。まずボランティアを対象に、パッシブドライバーの中心を剣上突起から右方に3横指の位置(以降、右方)と剣上突起の位置(以降、中心)、ATはそれぞれ50%と70%に設定し、4つの異なる手法で同一部位の肝弾性率を全て3回ずつ測定し、測定法毎の終了後に不快度に関するアンケート調査を行った。慢性肝疾患20例に対しては、検査時間の延長を考慮しルーチンの手技である右方AT50%に中心AT70%の条件のみ追加し2つの手法で測定および調査を行った。【結果】ボランティアデータの測定結果においては、各測定方法で被験者毎の3回の測定値の変動係数の平均は0.05以下であり、全ての測定法において測定値のばらつきは認めなかった。また各測定法間の被験者毎定測定値は強い相関を示し、診断能への影響が極めて小さいことが示唆された。臨床データにおいても同様の結果であった。なお、今回の調査では測定法間の不快度に関する有意差は認めなかった。【結論・考察】パッシブドライバーの中心は従来の肝臓付近ではなく肋骨に直接触れにくい剣上突起付近に設置し、ATは従来の50%に設定することで従来の診断能に影響なく被験者の不快度が軽減されると考える。ただしATに関しては、パッシブドライバーが肝臓から遠位になることで十分に振動波が届かないケースもあるため、今後の追加検討が必要である。