[O-1-121] 腰椎椎間板のglycosaminoglycan CESTにおける飽和パルスの印加時間が及ぼす影響
【背景】Glycosaminoglycan chemical exchange saturation transfer (gagCEST)法は,グリコサミノグリカンに含まれるヒドロキシ基のプロトンのCEST効果を利用する方法で,軟骨変性の定量的評価法として期待されている.CEST効果は飽和パルスの印加時間に依存するが,gagCEST効果についての報告はない.【目的】飽和パルスの印加時間が腰椎椎間板のgagCEST効果に及ぼす影響について検討する.【方法】評価対象は当院倫理審査委員会の承認を受け,同意の得られたボランティア11名(年齢31.5±6.0歳;男性10名,女性1名)で,各腰椎(Lumbar)椎間板の,L2/L3,L3/L4,L4/L5およびL5/S1の合計36椎間板とした.MR装置はPhilips社製Achieva 3.0T TX,CoilはTorso cardiac 32 ch coil (posteriorのみ)を使用した.T2強調画像,B0 mapおよび飽和パルスを-3.0~+3.0 ppmまで0.25 ppm刻みで照射した画像をSagittalで撮像した.また,飽和パルスの印加時間は0.5,1.0,2.0 secと変化した.得られた画像にB0補正を行い,Z-spectrumおよびMagnetization ratio asymmetry (MTRasym)を求め,MTRasymの0.5~1.5 ppmの平均をCEST効果とした.また,T2強調画像から椎間板変性の程度をPfirrmann grade1~5に分類した.飽和パルスの印加時間によるCEST効果の変化およびCEST効果とPfirmann gradeとの相関をSpearmanの順位相関係数を用いて評価した.【結果】飽和パルスの各印加時間においてPfirmann gradeの増加に伴いCEST効果は減少した.CEST効果は,grade1において1.0と2.0 secの間に有意差を認め(p<0.05),grade2においては0.5と1.0 sec(p<0.01),1.0と2.0 sec(p<0.05)の間に有意差を認めた.また,grade3,4および5においては飽和パルスの印加時間によりCEST効果に変化が見られたが,有意差はなかった.Pfirrmann gradeとの相関は,印加時間0.5,1.0,2.0 secの順にr = -0.60,-0.74,-0.63 (全てp<0.0001)となり,1.0 secで最も負の相関が大きくなった.【結論】gagCESTにおいて飽和パルスの印加時間によりMTRasymのピークおよびCEST効果が変化した.今回の条件においては飽和パルスの印加時間は1.0 secが最適であると考えられる.