[O-2-149] 腹部大動脈の異常な血行動態は動脈硬化性変化と関連する
目的:過去の研究において、壁剪断応力(WSS)の低下や振動剪断応力(OSI)の増大が、動脈硬化の進行に関わる遺伝子を発現させることが示されている。近年開発された4D-Flow法は、腹部大動脈全体の血流ベクトルを撮影することができ、解析によりWSSとOSIを算出できる。今回の研究で4D-Flow法を用い、腹部大動脈の血行力学的要素が硬化性変化の要因となるかを評価することにした。方法:2013年1月から2013年6月までの期間に4D-Flow MRIと造影CTAを施行された30-82歳までの患者26人を対象とした。(ただし腹部大動脈瘤の患者は除外)CTA画像から腹部大動脈の石灰化とアテローマ形成の度合いを判別し、それぞれ三段階に分別した。MRIは全て3.0T MRにて16ch torso phased array coilを用いて行われた。血管壁境界決定のためのGd造影MRAを撮影後、ECG gated、 resp compensated GRE-basedの冠状断4D-Flow MRIを撮影した。得られたデータは血流解析applicationで3次元ベクトルと血流パターン解析を行い、腹部大動脈の収縮期・拡張期WSSとOSIを算出した。これに加え、石灰化・アテローマ、収縮期・拡張期血圧、最大径、弯曲の有無を要素として多変量解析を行った。結果:腹部大動脈のアテローマを目的変数として解析を行ったところ、拡張期WSS (p = 0.0458) とOSI (p = 0.0274) が有意となった(P<0.05)。4D-Flow MRIをもとにStream line解析を行ったところ、拡張期において硬化性変化のある患者では逆流や渦流・らせん流が観察された。これに対し硬化性変化のない患者では軽度の乱流が見られるにとどまった。収縮期では大多数の患者で概ね相流であった。硬化性変化が見られ患者では、渦流・らせん流といった異常な血行動態がWSS低下、OSI上昇をきたしたと考えられる。結論:腹部大動脈の異常な血行動態がWSSの低下やOSIの上昇を誘発し、硬化性変化の要因となる可能性がある。4D-Flowはこのような血行力学的要素をin-vivoで測定することができる有用な撮影法である。