[O-2-156] 認知処理切り替え機能を検査する臨床fMRIの研究
【目的】タスクスイッチ課題として使用されている色/形課題に加え、音韻/書字課題を新たに作成した。これらの結果を先行研究と比較することで、2つの課題が認知機能評価を行う臨床検査法として有用であるかを検討した。【方法】健常ボランティア13名を対象とし、fMRIを用いた課題実行時の脳機能画像、行動データを取得した。脳機能画像の解析にはStatistical Parametric Mapping(SPM8)を用い、前処理、個人解析、集団解析を行った。統計解析にはt検定(p<0.005)を用いた。交互遂行課題と単純弁別課題、及び2つの課題間で、それぞれの有意差のあった部位のBrodmann’s area(BA)を特定した。また、行動データ(スイッチングコスト、ミキシングコスト、正答率)についてもt検定を行った。【結果】色/形課題の交互遂行課題と単純弁別課題では、前運動野・補足運動野、前頭前野背外側部、背側前帯状皮質、体性感覚連合野、縁上回、二次視覚野、前頭眼野で有意差が見られた。音韻/書字課題の交互遂行課題と単純弁別課題では、縁上回、背側前帯状皮質、島皮質に有意差が見られた。課題間の比較では、色/形課題に対する音韻/書字課題に、前頭前野背外側部で有意差が見られた。逆の場合、有意差は見られなかった。行動データについての測定結果と条件間比較をt検定した結果、課題間スイッチングコストはt(9)=0.25, n.s.、ミキシングコストはt(9)=0.88, n.s.、正答率はt(9)=1.77, n.s.であり、この標本数から認められる差はなかった。【考察・結論】本実験の結果は先行研究と一致しており、再現性のよいfMRI課題が作成できた。行動データの結果から課題の難易度は色/形と音韻/書字課題でほぼ同等であると考えられた。この2課題における脳の活動領域の違いは、左脳の前頭前野背外側部(BA9)であり、慣れた場面のモニタリングに関連した実行制御に関与している。課題間で生じた有意差も含め、先行研究と本研究の結果に概ね一致した脳活動が見られたため、今回用いたいずれの課題も認知機能を評価するための課題として適切であると示唆された。今後、高齢者について今回用いた課題で差が出るか否かやこれらの課題の有用性について検討する。