第42回日本磁気共鳴医学会大会

講演情報

一般演題

水脂肪分離画像

水脂肪分離画像

2014年9月19日(金) 11:10 〜 12:00 第4会場 (3F 源氏の間北)

座長:磯辺智範(筑波大学医学医療系 医学物理学)

[O-2-217] エコー間隔の制約を軽減するMulti Point Dixon法の検討

白猪亨1, 谷口陽1, 尾藤良孝2, 越智久晃1 (1.株式会社日立製作所 中央研究所, 2.株式会社日立メディコ MRIシステム本部)

【目的】脂肪およびT2*の定量値を算出する手法の一つにMulti Point Dixon (MPD)法がある[1]。MPD法は,複数の異なるエコー時間(TE)の信号から水や脂肪,T2*,静磁場不均一量を分離することで,各物性値の定量分布を取得することができる。水と脂肪の共鳴周波数差をナイキスト周波数として定義した場合,従来のMPD法は,脂肪信号のエリアジングを防ぐために,標本化定理を満たすエコー間隔で計測する必要がある。その結果,信号取得時間に制約が生じるため,高分解能化やSNR向上が困難となる。そこで本研究では,標本化定理を満たさない長いエコー間隔でも各物性値を分離できるMPD法を提案し,その有効性を確認したので報告する。
【方法】提案法は,異なる複数のTEの画像から水が主成分の画素を抽出するステップ,複数TEの信号を離散フーリエ変換し,最大ピーク周波数の分布を算出するステップ,水主成分画素をシード点とし,エリアジングした脂肪信号ピークを考慮した領域拡大法により仮の静磁場不均一分布を算出するステップ,仮の静磁場不均一分布を初期値に用いた非線形最小二乗近似により,水や脂肪,T2*,静磁場不均一の各分布を算出するステップから成る。本手法の有用性を確認するため,水脂肪ファントム画像による評価を行った。使用したファントム画像は,ISMRM Challenge 2012のホームページ上で公開されている磁場強度3Tで計測されたサンプル画像を用いた(http://www.ismrm.org/challenge/node/18)。計測条件は,エコー数15,計測開始TEは1.420ms,エコー間隔は0.812msである。本検討では,15エコーの画像から1,2,3エコー間隔で間引いた4エコーの画像を用いて各物性画像を算出し,水と脂肪の比画像を用いて評価した。
【結果と考察】提案法により,標本化定理を満たさないエコー間隔でも各物性値を分離できることを確認した。また,分離精度がエコー間隔によって向上あるいは悪化することを確認した。以上の結果から,提案法によりエコー間隔の制約を緩和することで,より分離精度の高いエコー間隔を採用することできるため,各物性値の精度を向上できると考えられる。
【参考文献】[1] H. Yu, JMRI 2007;26;1153.