第42回日本磁気共鳴医学会大会

講演情報

一般演題

造影剤-基礎

造影剤-基礎2

2014年9月19日(金) 10:20 〜 11:00 第5会場 (3F 源氏の間西)

座長:岡田知久(京都大学医学部附属病院 放射線診断科)

[O-2-248] 実験小動物用永久磁石型MRIにおけるアルギン酸マンガン塞栓子を用いたラットMCAOモデルの遠隔作出

山田雅之1,2, 鈴木花歩1, 棚橋伸吾1, 堀瑞希1, 加藤良一1,2 (1.藤田保健衛生大学 医療科学部放射線学科, 2.藤田保健衛生大学大学院保健学研究科 医用放射線科学領域)

【目的】アルギン酸マンガン錯体を塞栓子としたラット中大脳動脈閉塞モデルの遠隔作出法(リモートMCAO)を考案し,その有用性を確認するため実験小動物用永久磁石型MRI装置(コンパクトMRI)において生体ラットを対象とした基礎検討を行う.
【方法】対象は雌性のWistar/STラット(SLC・200-230g)4匹とし,全ての対象について左大腿動脈に血圧計測,同静脈に麻酔薬投与,左外頚動脈に塞栓子注入をそれぞれ目的としてポリエチレンチューブ(外径0.97mm)を留置した.MRIは 1.5T-コンパクトMRI(DSファーマバイオメディカル・MRminiSA MRT-A1508AC)に,ソレノイド型撮像コイル(内径38mm)と自作のアクリル製頭部固定ベッドを組み合わせて使用した.局所脳血流量のモニターには当研究室で構築したコンパクトMRIとの同時計測システム(JSMRM2013, P-03-235)を使用し,リモートMCAO実施前後について左脳体性感覚野における血行動態を経時的に記録した.塞栓子にはアルギン酸とマンガンイオンの架橋形成反応を利用したアルギン酸マンガン錯体を使用し,左外頚動脈分岐部へ同塞栓子を逆行性に注入後,内頚動脈から中大脳動脈へ血行誘導性に投与した.コンパクトMRIにて対象動物のT1強調画像(TR/TE=400/11ms)および拡散強調画像(b=1000s/mm2)をそれぞれ撮像し,MCAOの作出前後について画像所見を比較検討すると共に,撮像後にTTC染色を実施して病理組織学的所見との対比を行った.
【結果と考察】アルギン酸マンガン塞栓子の投与前後において,対象動物の左側体性感覚野における局所脳血流量に明らかな低下を認めた.T1強調画像ではアルギン酸マンガン塞栓子により閉塞された左側中大脳動脈が明瞭な高信号で示され,拡散強調画像から求めたADC mapでは同支配領域が低信号を呈した.さらに,TTC染色では塞栓動脈の遠位支配域に虚血領域の存在が示された.本結果から,アルギン酸マンガン塞栓子を用いたラットMCAOモデルの遠隔作出が可能であること,マンガンの陽性造影効果が塞栓子を可視化することにより血管閉塞位置を同定できること,など一定の有用性が示唆された.今後,虚血領域に関する他法との比較や塞栓子の最適化が課題である.