第42回日本磁気共鳴医学会大会

講演情報

一般演題

マイクロイメージ

マイクロイメージ1

2014年9月19日(金) 11:00 〜 12:00 第5会場 (3F 源氏の間西)

座長:瀬尾芳輝(獨協医科大学医学部 生理学教室(生体制御)

[O-2-253] 実験動物としての海洋生物I:MRI法による鰓水流の測定

瀬尾芳輝1, 瀬尾絵理子2, 大橋好偉1, 早川実佳1, 村上政隆3, 大石和恵4, 丸山正4 (1.獨協医科大学医学部 生理学(生体制御), 2.東京大学 大気海洋研究所, 3.生理学研究所, 4.海洋開発研究機構)

脳脊髄液は側脳室、第III脳室、第IV脳室の脈絡叢で産生され、脳室からクモ膜下腔へ流れる。脈絡叢での脳脊髄液分泌圧が、脳脊髄液流を生み出していると考えられてきた。しかし、脳室上衣細胞の運動性線毛が欠如したり運動性の低下したマウスは水頭症を発症することから、線毛運動が水流を引き起こしているとの仮説が提案された。しかし、ヒト中脳水道での脳脊髄液は、心周期に同期した±25 mm/sの流速変動を示し、脳室上衣細胞線毛運動の寄与は定かではない。一方、二枚貝の鰓の側線毛(lateral cilia)は、鰓を透過する水流をおこしていると考えられ、数多くの研究が行われている。そこで、海洋性二枚貝が脳脊髄液水流研究の実験動物として使えるか、その可能性を検討した。 Mytilus galloprovincialis(ムラサキイガイ)を測定対象とし、測定には7 T AVANCE III マイクロイメージング装置(Bruker Biospin)を用い、海水温は22oCに維持した。外套腔内の水流速度と方向の測定には、flow-encoding gradient法を低速領域に最適化した。定常状態における入水管、下外套腔、鰓葉間腔、及び出水管での水流速は、各々、40-20、10-20、5-10、及び50 mm/sであった。出水管での水流速度は、マイクロスフェア法などで報告された値の範囲であった。鰓の水流の開始/停止時の時間的変化を測定するために、T1強調画像を用い流速5 mm/s以上の水流を1.92秒間隔で画像化した。鰓の水流開始時には、殻の開口前に鰓葉間腔の水流上昇が認められた。また、開口から1分以内に定常状態の水流速度に到達した。また、停止時においても、殻の閉口前に水流低下が生じ、鰓の線毛運動が水流を発生させていることが確認できた。 以上より、海洋性二枚貝は、脳脊髄液の水流の解析モデルとしての可能性があり、現在、水流の開始/停止時の水流動態についてデータ収集を行い、線毛運動による流れの形成について解析を進めている。