第42回日本磁気共鳴医学会大会

講演情報

一般演題

関節炎-リュウマチ

関節炎-リュウマチ

2014年9月20日(土) 11:00 〜 11:30 第5会場 (3F 源氏の間西)

座長:玉川光春(札幌医科大学医学部 放射線診断学)

[O-3-322] 非造影MRIによる滑膜炎定量評価 -滑膜・滑液分離評価法の考案

金政孝1, 西井孝2, 濱田英敏1, 冨田哲也3, 二井数馬3, 田中壽4, 吉川秀樹1 (1.大阪大学大学院医学系研究科 器官制御外科学(整形外科), 2.大阪大学大学院医学系研究科 運動器医工学治療学, 3.大阪大学大学院医学系研究科 運動器バイオマテリアル学, 4.大阪大学大学院医学系研究科 放射線医学)

目的
変形性膝関節症(OA)における疼痛強度には, 軟骨, 半月板や軟骨下骨の障害ともに滑膜炎の強い関与が示唆されている. 一般的な非造影MRIでは滑膜と滑液は分離評価困難なため経静脈的造影MRIが標準診断法とされているが、腎性全身性線維症などの副作用リスクがある。 滑膜と滑液のMRIでの組織固有T2値が異なることに着目し非造影MRIを用いた膝関節滑膜炎の定量評価法を考案し, 疼痛との関連性を検討した.
方法
人工膝関節全置換術前のOA 13例および関節リウマチ4例を対象とした. 3テスラMRIを用いて膝関節全域の T2マッピング矢状断像を撮像した。文献値を参考に滑液領域T2値≧430 ms, 滑膜領域T2値100~430msと定義し, 画像解析ソフト(Baum globe, 大阪大学)を用いて各断層上で膝蓋上嚢部と関節窩の滑膜・滑液の領域を抽出後, 滑膜と滑液の体積および滑膜/滑液比(M/F比)を算出した. Whole-organ Magnetic Resonance Imaging Scoreに準じた関節軟骨損傷スコアと New Knee society score(NKSS) を用いた疼痛強度を評価した. 各計測値 と疼痛強度との関連性を検討した.
結果
T2マッピング像では全症例で滑膜と滑液は容易に判別可能で, 滑膜量は16.6±8.6ml, 滑液量は8.6±8.1 ml, M/F比は3.05±1.93であった. 軟骨損傷スコアは35±10.8, NKSSは47.4±21.9であった. NKSSに対して滑膜量は中等度の相関性(r=-0.510)が認められたが, 滑液量, M/F比, 軟骨損傷スコアとの有意な相関性は認めなかった.
考察および結論
MRIでの造影剤使用は腎性全身性線維症などの副作用があり、高齢者を中心とする変形性膝関節症患者には非造影MRIでの評価が望ましい。今後造影MRI評価との比較検証は必要であるが、今回T2マッピングを用いた滑膜炎評価で滑膜量と疼痛スコアに高い相関性が認められ、今後造影MRI評価との比較検証は必要であるが, 本法は疼痛関連性の有用な非造影MRI評価法になりうる可能性が示唆された.