第42回日本磁気共鳴医学会大会

講演情報

ポスター

脳のfMRI

脳のfMRI

2014年9月19日(金) 11:12 〜 12:00 ポスター会場 (5F 通路)

座長:瀧澤修(シーメンス・ジャパン株式会社 イメージング&セラピ一事業本部)

[P-2-178] MRIを用いた匂い物質の識別メカニズムの解析

後藤はるな, 平金真, 吉永壮佐, 舩津大嗣, 岩本成人, 寺沢宏明 (熊本大学大学院生命科学研究部 構造生命イメージング分野)

【背景】嗅覚系は、多くの哺乳類で生殖行動や学習において重要な役割をもつ。匂い物質は、吸気とともに鼻孔に取り込まれ、鼻粘膜上皮に存在する嗅覚受容体に選択的に結合する。それにより引き起こされた化学感覚シグナルが、嗅覚神経を通して嗅球表層部の糸球体へと伝達され、嗅球内部、さらには、より高次の脳領域へと伝わる。匂い物質により活性化される糸球体の空間分布パターンは、個々の匂い物質に特有のものであることが報告されている。

【目的】本研究は、高い空間分解能をもつ manganese-enhanced MRI (MEMRI) 法と、リアルタイムに高い時間分解能で撮像できる cerebral blood volume (CBV) 法と blood oxygenation level-dependent (BOLD) 法に基づいて、それぞれ得られる匂い応答の情報を統合し、匂いを識別するメカニズムを明らかにすることを目的とする。

【方法】MEMRI 法では、C57BL/6 マウスにマンガン造影剤を投与し、匂い物質による刺激を与えた後にT1 強調画像を連続的に撮像した。CBV 法と BOLD 法では、T2* 強調画像の連続撮像中に匂い刺激を与えた。CBV 法においては、予め ultrasmall superparamagnetic iron oxide (USPIO) 造影剤をマウスに投与して用いた。匂い物質としてオクタナールとムスコンを用いて活性化部位を比較した。撮像には 7 T MRI 装置とクライオプローブ (Bruker Biospin) を用いた。解析には SPM8 と ImageJ を使用した。

【結果・考察】MEMRI 法による嗅球画像において、オクタナールとムスコンで異なる空間分布をもつ信号増強パターンが観測された。これは、嗅上皮において匂い刺激を受容した細胞特異的に Mn2+ が取り込まれた後、嗅球内の投射部位において各匂い物質特異的に Mn2+ の蓄積が起こり、特徴的な信号増強パターンが生じたと考えられる。現在、脳内の活性化部位の違いに着目し、MEMRI 法に加えて CBV 法と BOLD 法を用いた解析を進めている。これらの知見をもとに、嗅球から全脳へと至る匂いを識別する嗅神経回路を MRI に基づき包括的に明らかにする。