[P-3-231] 頸椎黄色靭帯石灰化症のMRI
黄色靭帯石灰化症は変性した黄色靭帯に石灰化を来す炎症性疾患で,沈着する石灰化成分はピロリン酸カルシウムやハイドロキシアパタイトなどの結晶である.この疾患は黄色靭帯骨化症とは異なる疾患であり石灰化のメカニズムは不明であるが,結晶誘発性関節炎との関連が示唆されている.今回我々は頸椎に生じた黄色靭帯石灰化症の1例を報告する.症例は2型糖尿病で加療中の60歳代の男性.左上肢の痛みを訴え,頸椎MRIが撮像された.C6/7の椎間板は軽度扁平化し,骨棘による硬膜嚢の圧排と肥厚した黄色靭帯による頸髄左側の圧迫が認められた.黄色靭帯の肥厚は半球状で,T2強調像およびグラディエントエコー法で内部に低信号域を認め,黄色靭帯石灰化症が示唆された.同日施行されたCT では左黄色靭帯内に卵円形の高吸収域を認め,この高吸収域は椎弓板や硬膜とは不連続で,間に軟部濃度が介在し,黄色靭帯石灰化症が強く示唆された.頸髄の圧迫があり左中心灰白質にT2延長域を伴っていたため椎弓形成術が行われ,痛風検査用アナライザーを用いた観察でピロリン酸カルシウム結晶の沈着と診断された.黄色靭帯石灰化症は MRI のみでは診断を確定できないが,ほとんど全ての頸椎・傍頸椎部の疾患ではMRIがスクリーニング検査とされており,T2強調像およびT2*強調像での類円形の低信号は黄色靭帯骨化症よりも石灰化症を示唆する所見であることを記憶に留めておくことが望まれる.