第42回日本磁気共鳴医学会大会

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シンポジウム

シンポジウム3

MRSの小児臨床応用とGABAマッピング

Fri. Sep 19, 2014 9:30 AM - 12:00 PM 第1会場 (5F 古今の間北・中)

座長:原田雅史(徳島大学大学院へルスバイオサイエンス研究部 放射線科学分野), 富安もよこ(放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター)

[S3-3] 小児神経疾患における proton MRSの臨床応用

高梨潤一 (東京女子医科大学八千代医療センター 小児科)

Proton MRSは非侵襲的に脳代謝情報を取得することができる。小児は頭蓋骨脂肪が少なく、水分に富み、容積も小さいことから成人に比しシャープなスペクトルを得ることが可能である。
一方で新生児から乳児にかけては脳の発達に伴いproton-MRS で観察される代謝物質が経年的変化を呈するため、読影には注意が必要である。N-acetylaspartate (NAA) は神経ネットワーク成熟とともに増加し、Choline (Cho) は髄鞘化に伴い低下する。また近年代謝物質の定量化に頻用されるLCModel(water scaling法)は、成人白質の水信号(PD=35.88M, exp(-TE/T2) = 0.7)をデフォルトとするため、高プロトンかつT2値の長い新生児から乳児の定量値は補正 (Takanashi. JMRI 2012) が望ましい。新生児白質の PD=42M, T2=150msecと仮定すると、LCModel での定量値は +40%する必要がある。
小児神経疾患における MRS の有効性としては、1. 主要スペクトルが消失ないし著高を示す疾患、2. 異常蓄積した代謝物質が異常スペクトルとして観察される疾患、3. 疾患特異的ではないが病態(脱髄、髄鞘形成不全など)に即した1H-MRSパターンが挙げられる。1. Creatine (Cr) の欠損するCr deficiency syndrome、NAA高値を示すCanavan disease、Salla disease, Pelizaeus-Merzbacher disease (PMD) など、2. Sjogren-Larsson’s syndrome (0.9, 1.3 ppm due to long chain fatty alcohols)、Succunate dehydrogenase欠損症 (2.40 ppm due to succinate)、メープルシロップ尿症 (0.9-1.0 ppm due to branched chain amino acid, keto acid)、ガラクトース血症 (3.67, 3.74 ppm due to Galactitol)、非ケトン性高グリシン血症 (3.55 ppm due to Glycine) など疾患特異性が高い。3. 先天性大脳白質形成不全症(hypomyelination, PMDなど)では神経疾患で一般に低下するNAAが正常ないし高値(Takanashi. JMRI 2014, Neurology 2004)、Choが低値(脱髄疾患では高値)であり有用な情報となる。日本の乳児に多発する二相性脳症 (AESD)では急性期にGlx (glutamine+glutamate) が高値 (Takanashi. Neurology 2006) であり、興奮毒性を病態とする根拠となっている。