[S5-5] Time-encoded ASL法と灌流画像・4D-MRAの同時収集への応用
近年Arterial Spin Labeling (ASL) は、脳灌流画像技術として臨床的に広く普及してきているが、それと同時に4D-MRAの撮像技術としても活用されはじめ、その有用性が報告されるようになってきた。4D-MRAは、脳の主要な血管・小血管における狭窄・閉塞や側副血行路など、血液が運ばれる状態を時系列で描出し、脳灌流画像は、血液の運搬先である細胞近辺における毛細血管血流(灌流)を反映した情報を与えてくれる。これら二つの撮像技術から得られる情報を組み合わせることによって、脳の血流動態をより包括的に知ることができる。 現在脳灌流画像には、pulsed ASL (PASL) 法よりも高いSNRを実現するpseudo-Continuous ASL (pCASL) 法が最も一般的に用いられるようになってきたが、一点のPost Labelinig Delay (PLD) における灌流画像では、ASL信号が低下している領域が、実際に脳血流量が低下しているのか、ラベリングされた血液の到達が遅れているのかを判断することは難しい。そのため、その問題を克服するべく様々な方法が検討されている。2007年にGüntherによって発表されたtime-encoded ASL法は、従来のpCASL法のようにラベリングパルスを連続的に印加しつつも、Hadamard encodingに基づいたラベリングとコントロールを組み合わせることによって、multi-phaseでASL信号を観察することが可能なpCASLシーケンスであり、arterial transit time (ATT) map の作成や、より正確なCBF測定の試みなどが進められている。 我々はtime-encoded ASL法を活用し、脳灌流画像とmulti-phase 4D-MRAを同時に収集する撮像技術を考案した。この撮像技術は、pCASL特有の長い連続ラベリングパルスを用いることによってSNRの高い脳灌流画像を得ることと、動脈血が脳血管に流入し末梢へ流れていく血流動態を、高い時間分解能の4D-MRAとして描出することの両方を、一回の撮像で同時に実現することができ、より包括的な血流情報を臨床の現場へ提供することができると期待されている。 本シンポジウムでは、time-encoded ASL法の技術的な背景や最近の研究、およびtime-encoded ASL法を応用した灌流画像と4D-MRAの同時撮像技術について紹介する。