第23回認知神経リハビリテーション学会学術集会

講演情報

一般演題

ポスター発表

[P2] 神経系(上肢)

[P2-13] 上肢到達行為における運動学習について
~脳梗塞右片麻痺を呈した利用者の長期経過より~

*及川 岳1 (1. 医療法人葵会 もりおか往診ホームケアクリニック)

【はじめに】
 発症後数年経過した脳梗塞右片麻痺利用者の通所リハ介入を経験した。IPU巧緻動作検査(IPUT)変化量から上肢到達行為への介入方法や運動学習の様相等について考察したため以下に報告する。

【症例】
 70代、女性、右利き、要介護1。左脳梗塞(右片麻痺)発症約半年後に通所リハ開始(本介入は更に数年後)。BRS:ⅣーⅣーⅤ。生活動作はほぼ左側上肢使用にて家事まで自立。評価的訓練では片側において運動の順序・位置関係等は認識可能で注意による特異的病理の一部制御可能も、右側では深部感覚等の過小評価あり。両側においては右側深部感覚等を基準に比較する場面あり、左側の誤認が認められた。右上肢のイメージについては重さが常に先行し、Kinesthetic and Visual Imagery Questionnaire(KVIQ)では肩:視覚イメージ4点・筋感覚イメージ3点、肘:視覚イメージ3点、筋感覚イメージ4点であった。予備調査では、左側は繰り返しでのIPUT測定値改善がみられたが右側ではみられず、認知課題が他動的関節運動より測定値の改善を得た。

【病態解釈・介入方略】
 症例は右側深部感覚情報や運動イメージ等を基準に左側を探索することが運動学習阻害の一因と考えた。また予備調査より、右側は逆モデルでの学習にて内部モデル修正をしつつ左側の順モデルでの学習に近づける必要があると考えた。介入では不安定板での重錘識別・机上における両上肢の位置関係の識別(第2段階)等を実施し、左側から右側への運動イメージ活用や到達行為の再組織化を図った。

【治療アプローチおよび経過】
 発症数年後から2ヶ月の介入にてIPUTは33.56秒から23.91秒に改善。右側到達運動に関しては「手前はいいんだけど奥のほうが重くて」と距離に応じた意識経験の変化を認めた。また生活動作においては「右手では塵取りを手に取ります」等の右到達行為に関する記述が得られた。

【考察】
 道免は健常者と片麻痺患者の模倣による運動学習効果の違いを報告しているが、今回の経験から片麻痺患者では左右上肢での運動学習様式にも違いがあるのではないかと考えた。生活期片麻痺患者は麻痺側上肢の使用頻度も多く誤学習頻度増加が考えられ、運動学習の様相についての評価や教師信号としての非麻痺側の重要性が考えられた。

【倫理的配慮(説明と同意)】
 本発表に関して、症例に説明し同意を得た。