Riabilitazione Neurocognitiva 2023

Presentation information

一般演題

ポスター発表

[P3] 神経系(下肢・体幹)

[P3-18] 足部へ過剰に注意が向く分回し歩行症例

*山下 峰明1,2、沖田 学1,2、國友 晃1,2 (1. 愛宕病院リハビリテーション部、2. 愛宕病院脳神経センターニューロリハビリテーション部門)

【はじめに】
 分回し歩行を呈した左片麻痺症例は足部へ過剰に注意を向けていた.そこで,身体全体の変化に注意を向ける空間課題で分回しが軽減したため報告する.

【症例紹介】
 症例は脳梗塞後9ヶ月経過しボツリヌス療法(BTX)目的で入院された40歳台男性である. 今回は2回目BTX +集中リハ後に1~2/w外来リハを行った3ヶ月間の経過である.下肢BTXは大腿筋と内反尖足筋へ施注した.左下肢Br-StageⅣで表在感覚重度鈍麻と足関節深部感覚軽度鈍麻を認めた.高次脳機能低下はなく,ADLは自立した.足底左右同時接触刺激で左側消去現象を認めた.左下肢荷重時「足が定まらん,こける」と訴え,立位は右下肢優位であった.座位は体幹正中位だが,歩行の振り出し時に過度な右側骨盤偏移と体幹左側屈で分回し,時折前足部が床と接触した.この現象は口頭指示と共に鏡を見て気づき一部修正したが,その際「右足の裏だけの感覚でわかる,左足はあんまりわからんきとりあえず曲げるけど特に足首をぐっと上げる」と自己分析した.

【病態解釈と目標】
 症例は痙性による内反尖足と感覚障害により効率的な振り出しができない.特に,左側表在感覚重度鈍麻で注意の容量が必要であった.一方で,深部感覚軽度鈍麻で足尖の引っ掛かりは気づき,足部に固執した感覚情報の取得になっていると解釈した。この身体表象により体幹と下肢の協調的な振り出しができず,分回しの修正ができないと推察した.麻痺側において保たれている股関節・膝関節の深部感覚を基盤とした認知運動課題により痙性の抑制と下肢関節の注意分配で分回しの改善を試みた.

【課題と経過】
 立位で骨盤外側に硬度の異なるスポンジを用いた課題と麻痺側前遊脚期の肢位で,スポンジの硬度を踵で照合すると共に股関節・膝関節の位置関係を深部感覚で回答する課題を実施した.結果,姿勢変化に対し注意分配が可能となり「骨盤で体重移動したら膝の屈伸が勝手にいくね」「左足は曲げんでも頭とか腰を意識したら足が出る」と訴え,分回しは軽減した.

【考察】
 足部へ過剰に注意が向く症例は,下肢関節の関係性に準拠した身体の感覚情報の変化が取捨選択が可能となった.これを契機に身体を適切にイメージできるようになり分回しの軽減に繋がったと考えた.

【倫理的配慮・説明と同意】
 対象者へ発表に関して説明し同意を得た.また,個人情報保護の匿名性に配慮した.