第23回認知神経リハビリテーション学会学術集会

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一般演題

ポスター発表

[P6] 運動器系

[P6-01] アキレス腱断裂患者のジャズダンス復帰へ向けて

*宮坂 結惟1、後藤 圭介2、安田 真章3 (1. 千葉徳洲会病院、2. 国際医療福祉大学 成田保健医療学部、3. 東京大学医科学研究所附属病院)

【はじめに】
 アキレス腱断裂患者に対し各身体部位の空間的位置情報と荷重の関係性を再構築する訓練を行った結果,座位や立位の姿勢制御の変化,ならびに歩容やダンスのステップが改善したため報告する.

【症例】
 症例はダンスレッスン中に左アキレス腱断裂を受傷した60代女性.術後よりギプス固定,松葉杖使用し1週間の完全免荷.その後プロトコールに則り内山式装具装着にて加療.外来リハビリを継続した.両膝蓋骨脱臼の既往があり病前より右下肢はKnee in-toe outを呈していたが自覚は乏しかった.単一のモダリティは情報構築可能も身体全体や左右比較には困難を呈していた.左足関節背屈可動域獲得後も踵挙げが困難な状態が続いており「踵が薄くて直接骨があるみたい」と記述していた.

【病態解釈】
 アキレス腱断裂の原因として,病前の両膝蓋骨脱臼後より両股関節や膝関節に違和感を抱えながらも,両股関節外旋位のダンスの基本姿勢で常に両下肢踵挙げの状態でのステップを行い,結果両下肢のアライメント不良は助長され,アキレス腱に過負荷が生じていたと推測される。術後完全免荷期間や装具装着期間もあり各身体部位の空間的位置情報と荷重との関係性についての情報構築に困難を呈していたため,これらの情報構築をすることが両下肢のアライメントの改善,および効率的な運動単位の動員に繋がるのではないかと仮説を立て検証した.

【介入および結果】
 座位での股関節内外旋,骨盤前後傾について過去の行為と比較を行いながら自主練習として位置づけた.座位における骨盤・股関節の可動域の拡大を自覚されると股関節制御も変化し,骨盤・股関節の空間情報が再構築され歩行時の骨盤動揺は消失し歩容は改善した.各身体部位の空間的位置情報と荷重の関係性を構築する課題として両足底下に絨毯を配置し絨毯の向きや高さ,傾斜について問いを出しダンスのステップの類似性を考慮し,更に足底圧情報の細分化を求めていった.結果,運動単位の動員が得られ踵挙げは持続的に可能となりダンスのステップを獲得することが出来た.

【考察】
 今回のアプローチは,絨毯の配置から足底圧情報の変化に対し各身体部位の空間的位置情報を統合することで荷重との関係性を再構築する経験となった.その結果,座位や立位における姿勢制御の変化,歩容の改善,ダンス復帰へと繋がったと考える.

【倫理的配慮】
 発表に対し書面で説明し同意を得た.