50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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シンポジウム

シンポジウム6 疾患別の術中脊髄モニタリング

Thu. Nov 26, 2020 1:00 PM - 2:30 PM 第7会場 (2F J)

座長:今釜 史郎(名古屋大学整形外科)、谷口 愼一郎(関西医科大学整形外科)

[SP6-3] 胸椎後縦靱帯骨化症後方除圧固定術における術中脊髄モニタリング変化の検討

安藤圭, 今釜史郎, 小林和克, 中島宏彰, 町野正明, 伊藤定之, 神原俊輔, 井上太郎, 小清水宏行, 世木直喜, 富田浩之 (名古屋大学 医学部 整形外科)

目的胸椎後縦靭帯骨化症(胸椎OPLL)は黄色靱帯骨化症合併とともに脊髄の高度圧迫を来しており、さらに胸髄という解剖学的特徴上脊髄が易損性であるために、脊髄を障害しない細心の注意が必要である。したがって術後麻痺の危険性の高い胸椎OPLLに対する、術中脊髄モニタリングは必要不可欠なツールといえる。今回我々は、胸椎OPLLの術中波形変化について調査したので報告する。対象および方法2010年以降、Br(E)-MsEP(下肢14筋、大腿内転筋AL、大腿四頭筋Quad、大腿二頭筋Ham、前脛骨筋TA、下腿三頭筋GS、母趾内転筋AH、肛門周囲筋Sp)によるモニタリング下に後方除圧固定術を行った胸椎OPLL41例(男性28例、女性13例、平均年齢47.8歳)を対象とした。平均身長161cm、体重90kg、BMI33.7であった。全例に一期的後方除圧矯正固定術を施行した。これらの症例に対し術前後波形導出筋、術中電位変化(連続した70%以上の電位変化)、そのタイミング(展開、スクリュー刺入、片側ロッド取り付け、棘突起切除、椎弓切除、後弯矯正固定)、電位回復の有無、そのタイミング(片側ロッド取り付け、除圧、後弯矯正固定)について調査した。結果手術時間は平均407分、出血量は1142mlであった。最狭窄高位は上位9例、中位30例、下位2例、固定範囲は平均8.3椎間(3-15椎間)であった。術後麻痺悪化症例は16例(39%)であった。コントロール波形の導出率は全体で51%、AL32.9%、Quad31.7%、Ham40.2%、TA69.5%、GS52.4%、AH84.1%、SP42.7%であった。術中電位変化は33例に認めた。波形低下26例の内訳は展開時8例、スクリュー刺入時2例、棘突起切除時2例、除圧時16例であった。術中電位回復26例の内訳は片側ロッド取り付け時6例、除圧時7例、後弯矯正13例、自然回復1例であった。最終時の波形導出率は全体で46.9%、AL36.6%、Quad34.1%、Ham41.5%、TA57.3%、GS45.1%、AH73.2%、SP41.5%であった。最終時AH導出不能であった9例中8例は術後麻痺悪化症例であった。術後麻痺悪化症例中9例は電位低下し回復無し、2例は電位導出不能、1例は片側ロッド固定により回復するも除圧中低下した。最終時導出率の高かったAHについても麻痺悪化16例中8例で導出不能、2例は片側のみの導出、3例は導出筋がTA含む4筋のみであった。最終経過観察時麻痺症例含め40例は術前に比較し、麻痺は回復していた。考察胸椎OPLL41例中33例(80.5%)に術中電位の変化を認めた。波形低下は高度な手術手技を必要とする除圧時だけでなく展開時、棘突起切除時にも認められた。脊髄の高度圧迫、易損性は、術中操作脊髄アライメント変化による高い麻痺のリスクがあることが示された。電位回復の多くは後弯矯正固定時に認めており、脊髄の間接的除圧、固定効果の関与と考えられた。AHは術前麻痺の強い症例でも導出率が高く、術中の変化も脊髄障害に強く反映していることが示された。