第39回一般社団法人日本口腔腫瘍学会総会・学術大会

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8.悪性腫瘍・腫瘍免疫

[P08-03] IDO1を介したtryptophan-kynurenine-AhR経路は口腔扁平上皮癌において免疫学的腫瘍休眠を誘導する

〇安西 寛真1,2、吉本 尚平1、平木 昭光2、橋本 修一1 (1.福岡歯科大学 生体構造学講座 病態構造学分野、2.福岡歯科大学 口腔・顎顔面外科学講座 口腔腫瘍学分野)


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免疫学的な腫瘍休眠状態は、免疫チェックポイント療法などの免疫療法において良好な治療効果の奏効率低下に関わる重要な因子の一つと考えられている。しかしながら、免疫学的に腫瘍が休眠状態へ移行する機序については明らかとなっていない。近年、tryptophan(TRP)の代謝系が腫瘍の病態生理に重要な役割を果たすことが報告されている。TRPからkynurenine(KYN)を産生する代謝酵素として知られるindoleamine 2,3-dioxygenase 1(IDO1)は、がん細胞や樹状細胞に発現し、ダイオキシン受容体であるAhRの活性化を介して腫瘍を休眠状態へと誘導するとされているが詳細は不明である。本研究において、IDO1はヒト口腔舌扁平上皮癌(OTSCC)に発現し、その発現は腫瘍が低分化になるほど増加していた。OSCC細胞株であるHSC-4細胞において、INF-γ刺激によりIDO1およびAhRタンパクの発現亢進が認められた。これとは逆に、p27タンパク発現はINF-γ刺激後に抑制されたが、この発現低下はKYN-AhR結合阻害薬である3’,4’-dimethoxyflavone (DMF)処理によりその発現の回復が認められた。この結果より、p27タンパク発現はTRP-IDO1-KYN-AhRシグナル経路に依存していると考えられた。また、幹細胞マーカーである LGR6がOTSCCに発現し、腫瘍が低分化になるほど増加しており、さらにはINF-γ刺激HSC4細胞においても発現の増加がみられた。以上の結果から、TRP-IDO1-KYN-AhR経路の活性化がヒトOSCCsにおいて腫瘍の休眠状態への移行に寄与していることが考えられた。